第六話:潜む黒幕への一手! オカマ剣士、裏社会の門を叩く

 タルーネ商業街に暗躍するガルバードの陰謀が、徐々にその姿を明らかにしつつあった。魔獣まで使って人々を脅し、弱ったところを支配しようという浅ましい手口。だが、オカマ剣士ジュンはひるまない。むしろ、燃える正義感と人情深さ、そして笑いを交えた独特の存在感で、この腐りきった影を表舞台へ引きずり出そうと考えている。


 ある朝、ジュンはルイナの家の居間で、地図を広げながら頭をひねっていた。ルイナとレイがその横に並び、心配げな面持ちで見守っている。


「この街に入り込んだ連中が、どこからどうやって武器や魔物を調達しているのか…そこが鍵ねぇ。近くの港町や、山越えの集落、どこかに裏取引所があるはずよ。」

 ジュンは指をトントンと地図の片隅に当てる。その指先は、隣国との交易路が交差する境界近くを示していた。


「ジュンさま、それはまさか、裏社会が集う『盗人横丁』と呼ばれる地域…?」

 ルイナが怯えた声で尋ねる。聞くからに物騒な名前だが、そこは昔から違法な取引が横行していると噂の場所。


「そう、その盗人横丁よ。ガルバードみたいな奴が絡んでるなら、あそこにツテがあるに違いないわ。」

 ジュンは不敵に微笑む。怖いもの知らずのオカマ剣士にとって、危険地帯だろうが構うもんか。


「ジュンちゃん、そんな場所に行くの? 危ないわよ、変な奴らがうろついてるって聞くし、あんたが狙われたらどうするの?」

 レイが派手な衣裳の裾をひらひらさせながら心配する。だが、ジュンは軽く笑ってみせる。


「大丈夫よ、あたしは男でも女でもない最強の存在、でしょ? ちょっと裏口を叩いて、汚れた情報をさらえばいいだけ。」

 ここで、お馴染みの決め台詞はまだ早い。焦らず、じっとタイミングを待つオカマ剣士である。


 夜、更け。ジュンは黒いマントを羽織り、タルーネ商業街から小一時間ほど離れたその盗人横丁へと足を運んだ。路地は狭く、細い月明かりと行灯の弱々しい光が、むせ返るような臭気と混ざり合う。周囲はゴロツキ、スリ、密売人らしき輩がチラリと視線を投げてくるが、ジュンは堂々と胸を張って進む。


「おい、そこのあんた、珍しい面だな…」

 路傍で油を売るような男が声をかけてくる。金歯を覗かせるその男を、ジュンは涼しい目で見下ろす。


「ちょいと知りたいことがあってね、魔獣を街に流し込んだ奴を探してるの。心当たり、ないかしら?」

 ジュンはあくまで優雅に、しかしビシッと相手の懐に踏み込み、腕を軽くひねり上げる。男は「うげっ!」と苦痛の声を上げた。


「へ、変なこと聞くな! 俺は何も知らねえよ! そ、そうだな…あっちの納屋を探してみな、最近、怪しい取引があったって噂だ…」

 ビビった男が震え声で吐く情報に、ジュンは満足げな笑みを浮かべる。


「ありがと。いらないこと言ったら、また会いに来るわよ?」

 軽くウインクして歩み去るオカマ剣士。その背中に男は身震いした。


 示された納屋は、今にも崩れそうな木造小屋。ジュンが静かに近づくと、中からひそひそ声が聞こえる。

「…あのオカマ剣士が邪魔でな。ガルバード様もお怒りだ。次は毒薬入りの食材を流し込んでやる…」

「なるほどね。」ジュンは聞き耳を立てながら、そっと扉を押し開ける。そこには数名の不審者。ローブを纏い、毒瓶や黒い粉を弄っている。


 どうやら、もう一手仕掛けるつもりらしい。毒か、確かに弱い商人たちを病気にすれば、混乱と恐怖が広がるだろう。ガルバードは何としてもジュンを排除し、街を牛耳る構えだ。


 しかし残念ながら、ここに最強オカマ剣士がご来店。

 ジュンはビシッと剣を構え、優雅な笑みを浮かべる。

「悪いわね、あたしがいる限り、その程度の小細工は通用しないわよ。」


 驚いて振り向く一味を、ジュンは軽々と翻弄する。ひとりは剣先で脅かし、ひとりは足払いで転ばせ、さらに別のひとりは、毒瓶を持つ腕をひょいと捻って取り落とさせる。あっという間に全員が尻餅をつく有様だ。


 黒幕の手下が情けない声で叫ぶ。

「くっ、このオカマめ…!」

 そこだ、今こそ決め台詞のタイミング。


「…オカマなめんじゃねぇぞ、ゴラ!」

 ビシィッと剣を突きつけるジュン。男たちは泡を食って逃げ散り、何本かの毒瓶が転がる納屋に取り残される。


「ふぅ、これで計画はおじゃんね。さ、ルイナたちに報告して明日の朝には皆を安心させましょ。」

 ジュンは剣を収め、納屋を後にする。ガルバードの手下どもを追い払ったことが、奴にどんな影響を与えるか。次は直接対決かもしれない。


 戻ったジュンを、ルイナとレイが泣きそうな顔で出迎える。

「ジュンさま、無事でよかった…」

「まったく、心配させるんだから! でも、さすがあんたね♡」


 ジュンは笑い、そして小さく息をつく。人情と勇気で闇を斬る。このオカマ剣士の前には、どんな理不尽も立ちふさがれない。

 ――こうして、ガルバードの手口が少しずつ暴かれ、ジュンは最終的な対決へと向かって一歩前進するのであった。


 第六話、ここまで。次回、いよいよガルバードとの直接対決が近づく!?

 清廉なるオカマ剣士の旅路は、まだ始まったばかり。皆さま、乞うご期待。


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ジュンの世直し剣舞録〜最強オカマ戦士の清廉な旅路〜 カンジョウ @sometime0428

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