第3話 渡る世間は鬼ばかり

 私は今、石を投げられている。

 

 進化が終わり人の様な鬼の魔物鬼人となったは良いもののどうやら周囲の評価は最悪だったみたいだ。


 というのも人は下等種族という固定観念があるみたいで私は人間に近い容姿をしているからか差別の対象になったらしい。


 私以外は皆ロマンを選んだようだ。


 中にはよだれを垂らしながらこちらを見つめてくる奴もいる。


「グキャー!」


 痛いっつーの。


 覚えたからなお前の顔。


 とりあえず私は流星の如く飛来してくる石を避けつつ唐突な巣立ちをすることになった。


 今では腐った鬼の魔物グールに進化した元オガ母さん改めグル母さんは終始心配げな表情をしていた。やはり鬼でも母性はあるらしい。よだれさえ垂らさなければ『クソお世話になりました』と涙を流していた所だ。


 森の中を走り続けて数時間は経過した。今の私は素っ裸だ。ここが森の中であったことに感謝せねばならない。


「グォー!」


 森のクマさんが出現した。


 ちょうど良い。


 皮を剥いで服を作るとしよう。


 昔から愛用している木の槍を担いクマへと構える。


 そして、直進してくるクマをかわし頸椎目掛け槍を突き刺すとビクンッと体を硬直させ絶命した。


 進化したおかげか進化前と比べ大幅に力が強くなった気がする。

 

 クマの皮を剥ぎ、素人作業だが極限まで肉を削ぎ落とし即席の革服をつくる。


 山田太郎は変態から原始人に進化した。


 とりあえず、今後の目標としてはレベルをMAXまで上げることにしよう。


 前世の私ならキリの良いところで投げ出すところだが今回は妥協しない。


 森の中を進み続けていくと何となくだが出現するモンスターが強くなっている気がする。


『レベルが上がりました。19→20へ上がり進化が可能になりました。進化先を提示します』


 無論進化はしない。


 進化し続けたらいずれつまらなくなる。そこに努力の余地があるからこそ生きがいを感じられる。羨ましい【何か】になれるのだ。


 ゲームには終わりがある。


 だが現実に終わりはない。


『承諾しました。進化に用いるエネルギーを【来たるべき日】に備えストックします。加えて【権能:地獄】を会得しました』


 次の瞬間脳内に地獄の権能についての情報が濁流のように押し寄せてくる。


 情報によると【権能】とは魔族にのみ発現する異能のような物らしい。私が今まで倒してきたモンスターは【魔物】と呼ばれており自身も魔物に分類される。


 ややこしいだろうが鬼人とは亜人系の魔物という認識であり亜人系の魔物を一括りに魔人と人類は認識している。


 基本魔物は人を食らう残虐性と凶暴性を兼ね備えた害獣らしい。否定できんわ。


 まぁ、私は無害な魔人だからね。

 地味に生きるがモットーの山田太郎には人を喰らう勇気はございません。

 

 世界征服だとか人類根絶だとか英雄だとか救世主だとかにも興味はない。


 ただ、私が満足できる人生であるかが大事なのだ。


 努力をし報われる達成感と幸福感を得るためなら私は一切妥協しないと決めている。


 絶えず情報が頭の中に流れていく中草陰から1匹の兎のような魔物が飛び出す。


 試しに兎に向かって地獄の権能【地獄の業火ヘルファイア】を使用してみたところ赤黒い炎が兎を包み込み一瞬にして灰となり消えた。


うん、ヤバイなこれ。


 他にもたくさん能力はあるがそれは追々試して見ることにするとしてとりあえず私はレベル上げに専念することにした。


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