(胸の中のざわめき)

「ねぇねぇ、

 奈美ちゃんは氷馬くんのことどう思ってるの~?」




周りから弄られて、奈美がちょっと困った顔をしていたけど、僕は視線を反らしてリアクションの始終を見ないようにしていた。


だけどすぐに胸が変な感じになりそうだったから、堪らず話題を変えようと切り出す。




『ねぇ、かくれんぼしようよ?』


「いいけど、じゃあ氷馬くん鬼ね?」



話題を変えることには成功したけど、やっぱり簡単にあしらわれてしまう。


別にだからといって、何か問題があるわけじゃないんだけど、奈美の前で恰好が付かないようなことは避けたかった。


クラスの女子たちはマセていたけど、幼馴染の奈美だけは気持ち的に僕寄りだったように思う。誕生日も近いし、自然と話も弾むし。



『20数えたらいくよー?

 いーーーち……

  にーーーい……』



「きゃああーーーー!!」

「待ってまってーーー!!」




実のところ、今日ここに来たのは奈美が来ると分かったからで、ただ一緒に居たかっただけなんだ。


子供ながらに勝手に考えていたよ。


運命的な何かを。


まだ自分の中の感覚を言語化もできなかったし、それが”好き”というものかさえもわからないまま、どこへ向かうでもなく胸の中にあるざわめきを指針にして感情表現していただけかもしれないけどね。




『じゅうきゅーーーう……


  にじゅうっ!!!


   よーし行くからね~?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る