1. 運命的な何か。

(あの頃の僕)

昔のことは今でも鮮明に覚えている。


気が付くとあの頃の思い出に浸っていることがよくあるけど、僕の思い出にはいつも奈美がいた。


記憶の中で奈美の笑顔を追いかけて、懐かしくなって、切なくなる。


こんなにも切ない筈なのに、このルーティーンから抜け出したいとは思わない。








羽桐はぎり 氷馬ひょうま、小2の春——










学校から帰った僕は、近くの神社に集合した。





「氷馬くんと 奈美ちゃん、

 相性100%だって〜!

 すごくなーい!?」





8人の女子たちは雑誌の占いに夢中だった。


その輪の中に囲まれるようにポツンと佇む1人の男子が僕。


僕には幼馴染が何人か居て、そのうちの1人が紫桃しとう 奈美なみという女の子だ。



それぞれが気になるクラスの男子を当てはめて占ってみた結果、僕と幼馴染の相性が飛びぬけて高かったようで、大盛り上がりだ。



僕は小学生ながらに、”アイショウ”という響きを何かイケナイ事に感じてしまい、とても恥ずかしい気持ちになっていた。



「氷馬くん、顔 赤いよ~?

 奈美ちゃんのこと、もしかして好きなの~?? ふふっ」


女子たちは僕をからかう様に囃し立てる。精神年齢的に一枚上手だったからか、何も言い返すことはできなかった。



そんな中で追い打ちをかけるように、二つ上の上級生が通りがかる。



「氷馬、女子と遊んでんだ~?」



『ちっ、違……!』



変なプライドのようなものが口から漏れる。



上級生はそう一言だけ投げつけて、にやけた顔で立ち去って行った。



『んー……』



煮え切らない気持ちのまま振り返ったけど、女子たちは今のやり取りに目もくれず、占いで盛り上がったままだった。


普段は男友達とばかり遊んでいるのに、その日は偶々話の弾みで一緒になっただけなんだけど。あんな風に言われると心外だなぁと思いつつも、実はクラスの女子たちといるのは居心地が良いのは内緒。

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