0. 振り返ったって、もう居ない。

(Prologue)

◇◆◇


ずいぶんと時を重ねたあとで、気付いた事がある。



あの頃の僕は、自分の気持ちに嘘をつき続けていただけだったんだ。



好きになることが、なんとなく怖かったから。



だから、現実から目を背けて生きてきた。



あのとき奈美が僕に 何か話しかけようとしたときもそう。



臆病でごめん。



受け入れるだけの器量が僕にはなかったんだと思う。



大人になってから、そんな風に思ったよ。

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