?/? フラストレーション
フラストレーションが溜まっていることは、目にも明らかだった。外に出て日の光でも浴びれば治るだろうか、そんな人の体の単純なメカニズムを信じるだけで良いのだろうか。そう思いつつも、こうやって連ねた二文が何の意味も持たないことと、文脈的な正しさを持たず読む者に正しく内容を言い届けないことを知っている。無駄だ。無駄な文だ。そう思いながらも半端に習得したブラインドタッチを馬車馬のように働かせて指先だけで文字を紡がせている。雪かきだ。彼の大作家の言葉を借りねばならぬ程今の私には脳がない。ああ、雪かきだ。文化的な、文化的と言うのも烏滸がましい。誰かがこの文字の打ち込まれている様を呆然と眺めていれば分かるだろう。思考の折り込まれた速さじゃない。無心が織り成し、ただひたすらに脳味噌を通う暇すら持たずに指の第一関節だけを血がぐるぐると通って行き詰まってこれを生み出している。そして文字が時折止まるのは、半端なブラインドタッチのお陰で一度見失ったローマ字を追うことができないから。ああ、稚拙だ。無駄だ。子供だってまだまともに文を書く。幼い。可愛い。愚鈍。そんな飛べない鳥は気付かぬ内にきっと、籠の中で大事に大事にされてしまう。どろどろに甘やかされて食えぬ程の餌を籠の中に放り込まれて、無理矢理口に入れた餌は消化しきれずに腐っていく。そしてその腐乱の芽はめきめきと根を伸ばして私の中に根を張って、やがて私をも枯らすのだ。何が言いたいか分かるか。他人から過剰に与えられたものは私を枯らす。だがしかし、籠の中に水が無ければ干からびる。そういうことだ。要するに、自己完結だ。ここにあるのは自己完結の代物だけで、さらに言えば自己の中でさえも完結していない。愚かしい。愚鈍で程度が低くて物語の体を成していなくて物悲しい。そういうことだ。とりあえず、日の光を浴びる。それでもし万が一この私の身体が陽の気に焼け焦げて溶けたなら、きっと祝ってくれ。そう信じている。
高尚な文学の形をしていない。
吐き気がする。
嫌われている。
私はまだ、高尚な文学の形をしていたい。
吐きたい、が、生憎吐くものを口に入れていない。
何某か自分を否定する言葉を放ちたいという衝動に駆られているが、それがあってはならない。きっと少しずつは真人間に近寄れている。
愛していない。
時折こうして文字だけを稚拙に吐き出したくなることがある。対象はない。ただゲリラ的に、愛しているか愛していないかを叫びたくなる時があるのだ。頭は空っぽだ。何も考えちゃいない、内容を持っていない。内容を持たないからこそ入ってこない。小説の形をした何かだ。愛している。
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