第8話 震災
小学6年生になる頃にはネットの世界にしっかり依存しきっていた僕はいつしか配信者A達とのグループにいろんなことを教わり、ニコ生をするようになっていた。
雑談をしたりゲームをするそんな配信。
その頃には母や兄にも僕がネットの世界に身を置いているのもバレていたがネットさえ与えていれば操り人形のように動く僕に「問題だけは起こすなよ」と言うだけで干渉しなくなっていた。
ネットの回線が切られないように毎日学校に行き家のことをしてリアルを忘れるようにネットの世界に没頭した。
そして、3月。
兄の通う中学校は卒業で兄は友人と部活をサボり部屋で遊んでいて、卒業式の準備で午前中で学校が終わり帰っていた僕は配信をしていた時のことだった、急な大きな揺れに僕はパソコンを抑えた。
そう、3/11 東日本大震災だ。
当時の僕は福島県郡山市に住んでいた。
揺れが収まり兄は友人と友人の弟を心配して友人の家へ向かった。
1人家に取り残された僕は逃げるために配信を落とし外へ出た。
外は吹雪、テレビから流れる緊急地震速報の音、サイレンの音、同じマンションに住んでいた低学年の子供が泣く声で外は混沌としていたことを鮮明に覚えている。
同じマンションの住人に手を引かれ避難所に向かおうとした時、出かけていた母が車で帰ってきた。
しかし、母の口からでた第一声は
「兄はどうした。なんでお前だけがいるんだ。」
と僕への心配の声ではなく僕を軽蔑た声だった。
兄は友人の家へ向かったと伝えると、僕を後部座席に乗せ罵詈雑言を浴びせながら友人宅へと車を走らせた。
その後はいとこの家に避難し数日過ごした。
何も現状がわからず集められた子供は子供部屋に沢山置かれたゲームで兄、従妹、従妹の3つ下の弟が楽しそうに遊んでいる。
そんな3人をよそ目に扉の隙間から大人がいる部屋を覗いた。
大人達がいる部屋のテレビからは津波の映像とアナウンサーの声が流れている。
そんな景色だけが僕の中で色濃く残っている。
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