第2話 環境の酷い生活
ようやく体が動くようになった俺は記憶を辿って自分の住んでいた場所に向かっていた。
ハレス・ラヴィは嫌われているし家には居場所がないので、離れの小屋での生活を余儀なくされている。と言っても家の使用人たちも母親が死んでから俺に対する当たりが変わったんだけどな。
おそらく父親か義母あたりが何かを言ったんだろうな……まぁ、今の俺からしたらどうだっていい事だ。
「てか、マジで良くこの家で暮らしていたな……自分の味方が誰一人いないこの家で……」
ハレス・ラヴィは実母を3歳の頃になくしている訳でそれからは誰一人として味方がおらずいらない存在として過ごしてきた。
そんな環境で育ってきたからこそ誰が相手でもびくびくするようになっちゃったんだよな……ゲームでの記憶だと学園に入学してもほとんどのクラスメイト達からは俺に対して無の感情、つまりはどうでも良い存在って感じだったと思う。それでいて俺に気付いた人がいたと思ったら見下されるそんな感じだった。まぁ、無能だって事は周知の事実だからそのせいだが、兄が言いふらしてるってのも原因だろう。
軽い描写だけだったので深くは知らないけどそんな感じだ。
ちょっと厄介なのが主人公なんだよな……主人公は俺がラヴィ家って事で俺も悪い奴判定だったと思う。兄の事があり一度だけ関わった事があったんだよな。ヒロイン達の評価は知らないが主人公はそうだったところがちょっと面倒くさい事だ。
そんな事を考えながらハレス・ラヴィの住んでいた場所に着いた。
「はぁ、分かってはいたがマジか……」
それは家というよりも小屋と言った方が正しい。
全体が木で出来ていて、年期も入っているしぼろぼろだ。
とてもじゃないけど貴族が住む家とは思えない……てか庶民でももう少しいい家に住んでるんじゃないか?そんなレベルだ。この世界では起こるのかは知らないが地震が来たら一瞬で壊れるだろうな。
俺は恐る恐る家に入るが中にはぼろぼろのベッドと着替えが入っているタンスしかない。
勿論トイレも風呂もなくトイレに行きたくなったら家の外にある、地球で言うと仮設トイレ的な場所に行かないといけない……しかも凄くおんぼろ……そんな環境だ。衛生面は最悪と言えるだろう。
ご飯に関しても使用人からパンを一つ与えられるだけでそれ以外は何もない。
「服もボロボロじゃん……」
タンスに入っていた服もほとんどボロボロで多少ましな物があるくらいだった。
「流石にこの環境はきついな」
現代日本に住んでいた身からすると滅茶苦茶きつい。
前世の俺の家は多少裕福だった方だと思うがそうじゃなくてもきつい環境だと思う。
「こりゃ早くお金を稼ぐ必要がありそうだな……」
とはいえお金を稼ぐ方法なんて冒険者となって依頼をこなす以外には何も思いつかないよな……転生ものだったら良く日本であった物を作って売るとか定番だがそれにしても知識がないし特別な才能もないので現実的ではない。
ていうかよく考えてみたら冒険者とかしたら普通に無能を演じるとか無理だよな。
被り物を被ってとかでも悪くはないが不意にバレる可能性だってあるしな……てか逆に目立つ。
森とかダンジョンに行くだけだったら大丈夫だと思うが、素材を換金したりするときは必ず冒険者ギルドに行かないとだし人の出入りが激しすぎる。そんな訳で冒険者として稼ぐ事は難しい。
いや……てか冷静になって考えてみたらこの世界の冒険者って身分が判明していないと出来ないから普通に無理じゃん。
冒険者は一応は14歳からなる事が可能なのだが……やっぱり冒険者の選択肢はなしだな。
他に何かあるだろうか?
それから暫く頭を働かせていると……
「あ!そうだ」
今思い出したが、ここから結構遠いダンジョンにゴブリンキングの秘蔵庫があったはずだ!
ゴブリンキングがボスのダンジョンのゴブリンキングはゲームだと中盤くらいに倒せるようになるモンスターだから今はまだ倒せないが、強くなれれば話は別だ。もしボスであるゴブリンキングを倒すことが出来ればとある場所の隠し扉が空けられるようになるんだよな。でもまぁ、学園入学までにってのは厳しいのかもな。
それにゴブリンキングの秘蔵庫に行ったとしても【空間指輪】がないと財宝を持ち運ぶことすら出来ないし。
まぁ、ゴブリンキングの秘蔵庫は巧妙に隠されてるしだれにも見つからないだろうから見つかる心配はないか。
「ふぅー、仕方ない。この暮らしはかなりきついが今しばらくは辛抱するしかなさそうだな」
今はとにかく強くなることを最優先に考えてそれから【空間指輪】を入手してからダンジョンに入ってゴブリンキングを倒して秘蔵庫に突撃……これを目標にして過ごそうか。
多分学園に入学前にゴブリンキングを倒すのは難しいかも知れないがそこまで急ぐ事でもないからな。この生活はきついが我慢すればいいだけだ。目標としていたレベル20でゴブリンキングに勝てるわけもないしな。
生活が質素だが仕方ないから頑張ろう。
「まっ!頑張るって言っても明日からだけどな。今日はもう寝よう」
そう思い俺は睡眠をとることにした。
◆
――次の日俺は起きてから考えていた。
「まずは何からしようか……」
(ステータスオープン)
名前:ハレス・ラヴィ 男
年齢:14歳
レベル:1
適正魔法:なし
スキル:なし
固有アビリティ:魔力吸収
と言ってもこんなステータスじゃ今の俺は最弱と言って良いので、魔物と戦って強くなるてのはリスクが高い、だからとにかくスキルを得る所から始めないとだよな。
そんな訳でスライムなど弱い魔物を倒して少しづつレベルを上げるのも手ではあるが効率を考えても得策とは言えない。
「まぁ、そうだとしても今の俺が行動出来る範囲で考えないとだからな……」
今の俺は当然お金を使って馬車を使ったり護衛を雇う事すら出来ないので移動手段は一人の徒歩以外はない。
そんな訳でここから俺でも行けるダンジョンで魔物と戦わないでスキルスクロールを得られる場所に行くしかないのだが……
「いや!良い場所があるじゃないか!」
ゲームだと初心者向けのダンジョンで難易度もかなり低いそんなダンジョンだ。
そしてそんな初心者ダンジョンにはある仕組みがある。
それがダンジョン内の魔物を一匹も倒さないでボス部屋に居るゴブリン三体が居る部屋まで行くととある仕掛けが発動する。
そうするとボス部屋に居るはずのゴブリン達が現れないで隠し宝箱だけ現れるのだ。
開発者がどういう意図でこれを作ったかは分からないがこれをする事でストーリー進行のさくさく具合が全く違うんだよな。
このダンジョンはチュートリアルダンジョンと言っても過言じゃないダンジョンでボス部屋以外はスライムとミニゴブリンのみが出てくるので倒さないで逃げ続ける事は苦じゃない。
しかもその隠し宝箱には序盤で手に入って良いようなものじゃない強力なスキルスクロールが入っているのだ。それが"ファイアーバレッド"と言うスキルなのだ。
このスキルは終盤で考えると当然弱めのスキルだが、序盤で考えるとかなり強力だ。"ファイアーボール"を銃弾のように小さく凝縮して複数の球を打つ。そんなスキルなのだ。
"ファイアーボール"が初級魔法だとしたら"ファイアーバレッド"は中級魔法にあたる。
しかもそのバレッド数は魔力量に依存していてどのくらい魔力を使うかで細かく調節が可能だ。
まぁ、今の俺は【魔力吸収】があるとは言っても俺自身の魔力の限界量がまだまだ低いってのは分かってるから一度でそんなに多くは出せないだろうけど、魔力を使い切ったとしてもすぐに吸収できるから何度でも使用が可能なので"ファイアーバレッド"の一つさえあればかなり戦えるようになるのは間違いない。
それにゲームの知識として魔物の弱点もほとんど理解している訳だしな。
「となるとやるべき事はきまったな……」
まずは初心者ダンジョンに入って"ファイアーバレッド"を手に入れよう!
どうせ俺の家の人間は俺が居なくても気にしないだろうしな。
父親は俺に会いに来ることはまずないし、唯一会いに来る兄であるセインは俺を自分の魔法の実験体にする時くらいしか会いに来る理由がない訳だしな。
昨日来たって事は最低三週間は来ることはないだろう。
父親は俺に全くと言って良いほど興味がないので使用人たちが俺の不在を家の人に告げる事もまずありえないからな。
俺はそう思って早速家を出た。
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