妻を実の息子に寝取られた俺は傷心のまま田舎に帰るも、そこで息子の推しアイドルと友達になる。 息子は俺達の関係を妬み、息子に捨てられた妻は復縁を求めるが俺には何もできないよ。

panpan

第1話 海野 潮太郎①

 俺の名前は海野 潮太郎(うみの しおたろう)。

俺には妻の瑞希(みずき)と高校生の息子、大洋(たいよう)がいる。

瑞希は専業主婦兼パートでそこそこ美人の部類に入るとは思う。

大洋は異常なほどのアイドルオタク。

勉学をそっちのけでバイトに明け暮れ、アイドルグッズの購入やライブに行くための金を稼いでいる。

アイドルの追っかけをするのは結構だが、学生の本文を忘れないでほしいとは思う。

そして俺はというと……しがないサラリーマン。

家族を養うために必死で働く毎日……。

俺なりに働いてはいるものの……月の給料は少なく、俺が自由に使える金は雀の涙って所だ。

たまにこの生活が空しく思うことはある……でも嫌になったことはない。

妻のことは愛しているし、大洋のことだって大切に思っている。

2人だって、こんな俺のことを夫として……親父として……それなりに慕ってくれているとは思う。

いつか来る大洋の巣立ち……瑞希と過ごす老後の生活……。

そんな未来を安定させるためにも、俺が今踏ん張らないといけない。

そう……自分に言い聞かせて俺は頑張ってきた。

頑張って……きたんだ……。


--------------------------------------


「ただいま」


 ある日の夕刻……仕事を終えた俺は自分の家に帰宅した。


「なんだ?」


 家に入った瞬間……俺は少し違和感を覚えた。

いつもならこの時間……瑞希はキッチンで夕飯の支度をしている。

玄関からキッチンまではリビングを挟むもののさほど距離がないため、帰宅した瞬間……夕飯のおいしそうな匂いが俺の鼻をくすぐるのがパターンだ。

だが今は何も感じない……無臭だ。

しかもリビングや玄関前の電気がついていない。

今は冬だ……夕刻とはいえ辺りはすっかり日が沈んでいる。

それなのに家は真っ暗だ……。

電気を付けながらリビングにひとまず上がるが……瑞希の姿はどこにもない。

だが靴は玄関にあるから家にはいるはずだ。


「寝てるのか?」


 そう思って瑞希の寝室を確認しに行ったが、そこにも彼女の姿はない。

それにもう1つ……奇妙なことがある。


「大洋も……いないのか……」


 瑞希の部屋の向かいにある大洋の部屋をノックしてみたんだが……返事はなかった。

確か今日……大洋はバイトなかったはずだ。

高校生ということも考えれば、夜遅くまで家を留守にしているというのも珍しい事じゃないだろう……。

だが大洋はいわゆる外出を控える引きこもりタイプだ。

自室でアイドルの生配信を見たりして1日のほとんどをつぶしている。

だから学校が終わり、バイトもない日はほぼ確実に自室にいるはずだ。

……というか、玄関に大洋の靴もあったから家にいないはずはないんだよな。


「2人共どこへ行ったんだ?……?」


 家の中を探していると……風呂場の明かりがドア越しに灯っているのが視界に映った。

俺は少し駆け足気味に脱衣所へと入った。

そこには風呂に入る際に瑞希が脱ぎ捨てたであろう衣服や下着が散らばっていた。

それだけなら瑞希は風呂に入っている最中なんだと結論付けることができる。

だが俺の目には1つ……気になるものが映っていた。


「これ……大洋のだよな?」


 瑞希の衣服のそばに落ちていたのは大洋の学生服……。

それもまた大洋の下着と共に脱ぎ捨てられていた。

大洋が帰宅後にここで脱ぎ捨てていったのなら……瑞希がそのままにしているはずがない。

瑞希は家事に関しては少しマメな方だ……特に洗濯に関しては姑かというほど細かい。

その瑞希が……大洋の学生服を脱衣所に放置しておくとは考えにくい。


「まさか……な……」


 俺は胸騒ぎがした……。

おそるおそる風呂場に近づき、ドアに耳を当ててみると……。


『母さんの肌……すっごくすべすべだ』


『もう……母親をからかうのはやめなさい』


『とても40超えてるようには見えないよ……』


『あっ! こら、また甘えたりして……』


 風呂場から聞こえてきた声は……間違いなく瑞希と大洋だった。

こいつら一緒に……風呂に入っているのか?

いや、いくら仲の良い親子だからって……母親が高校生の息子と風呂に入るか? 普通。

どう考えても常識的にありえないだろう……。

異常な光景に俺はパニックになるも……落ち着いて考えてみた。

大洋は若干マザコン気質があるように見える。

常識の域を超えてはいるが、大洋にとっては母親に甘えているだけなのかもしれない。

瑞希もまた……子煩悩なところがある。

大洋にせがまれて断り切れなかったと言うのも理解はできないが、可能性はゼロと言えない。

そう自分に言い聞かせて気持ちを落ち着けようとしていると……風呂場からさらなる追い打ちが着てしまった。


『あぁぁぁん……ちょっと大洋……ダメだって……さっきまでさんざんシタでしょう?』


『ごめん……また我慢できなくなってきた』


『しょうがないわね……あと1回だけよ?』


 そんな淫猥な会話の後……風呂場から生々しい音が響き渡り始めた。

視界に入れなくとも、そこで何が行われているかは明白だ。


”瑞希と大洋は風呂場で性行為をしている”


 だがそんなおぞましく信じがたい事実など、受け入れられるわけがない。

できるはずがないだろう!?


「きっと何かの間違いだ……」


 俺は騒ぎ立てる心を静めるべく、ドアを少し開けてこの目で真実を確かめることにした。

2人が俺を裏切るような真似なんてするわけがない……。

わずかな希望を胸に、俺は2人の無実を心から信じていた。


『母さん……かぁさん……』


『大洋……お願い……もっとめちゃくちゃにしてぇ……』


 だが……真実は残酷だった。

瑞希と大洋は……濃厚なキスを交わしながら、互いの体を重ねていた。

まるで相思相愛の恋人同士のように……。


「嘘……だろ……」


 俺の心に残っていた小さな希望はあっけなく砕けた。

目の前で繰り広げられている以上……認めたくなくとも、認めるしかない。

俺は夫として瑞希に……父として大洋に……裏切られたんだ。

一体どうしてそうなってしまったのか……何が間違っていたのか……俺には知る権利がある。


『大洋……お母さん……幸せよ』


『幸せ? 父さんとシテいる時よりも?』


『えぇ……私の心は大洋だけのものよ』


『母さん……愛してる』


『私もよ……』


 あまりのおぞましさに……俺の言葉を失った。

あいつらは俺を裏切っていることに対して罪悪感を感じていない。

そうでなければ、あんな言葉は出てこないはずだ。


「……」


 俺はスマホのレンズを風呂場の中に向け、2人の痴態をスマホに収め始めた。

浮気の証拠を押さえるため……というよりも、2人に自分達がいかにおぞましい行為に及んでいるのかを知らしめるためだ。


※※※


『ハァ……ハァ……ハァ……』


 結局2人はそれから30分ほど行為に及び続けた。

互いに力尽き、湯に浸かって体を癒し始めた2人はなおも体を密着させていた。

もう俺には……これ以上2人の裏切りを耐え続けることができなかった。


バンッ!!


 俺は勢いよくドアを開け、風呂場へと足を踏み入れた。


「あっあなた!!」


「とっ父さん!!」


「お前達……これはどういうことだ? 説明しろ」


「えっと……違うのよ。 たまには親子水入らずでお風呂に入ろうって大洋にせがまれちゃって……」


 それもそれでかなりまずい気もするが……。

俺は構わずたった今撮った2人の痴態をスマホの画面に映し、2人に突き付けた。


「こんな痴態をさらしておいて……ふざけたことを言うな!!」


「おっおい父さん、それ盗撮じゃないか! 何を考えてるんだよ!?」


「何を考えている?……その言葉、そっくりそのまま返すよ。 一体お前は何を考えて、実の母親とこんなことをしたんだ?」


「うっ!」


 動画という決定的な証拠を突き付けらたことで、2人は事の詳細を話し始めた。


※※※


 大洋は高校生という多感な年頃故、日に日に女性に対する本能……いわゆる性欲が強くなっていることを悩んでいた。

これまで大洋はアダルトサイトで入手したいかがわしい動画や画像で、どうにか自身で処理していた。

だがそれでもどんどん処理しきれなくなってしまい……ある野望が心に強く浮かび上がった。


 ”生身の女と行為がしたい”


 それは男であれば決しておかしなことではない。

俺にだって若い頃……女に欲望を抱いたことはいくらかある。

だが人見知り気味で外見に秀でたところのない大洋には恋人はいない。

少ないながらも交流があった男友達にも、こんなことを相談する勇気はなかったようだ。

金で女に相手をしてもらうという手もあるが、大洋は未成年……そんな店には行けない。

そもそも大洋は決断力に乏しい所があるから、成人していたとしてもそんな店に行く度胸はないかもしれないが……。

そして……そんな大洋が相談相手に選んだのが瑞希だった。

赤裸々に相談する大洋に対し、瑞希はこう返したらしい。


『もっもし大洋が良かったら……お母さんが相手をしてあげましょうか?』


 瑞希はこともあろうに、実の息子の性のはけ口となることを提案してきたという。

あまりに異常的だが、それを受け入れた大洋も十分異常だ。

そして2人は行為に及んでからというもの……俺の目を盗み、逢瀬を重ねていたという。

しかも親子だから妊娠なんてしないだろうと根拠のない考えを持っていたため、避妊すらしていなかったらしい。

もう怒りだの悲しみだのそんなレベルを超えて……ただただ気持ち悪い。


「瑞希……なんで大洋を受け入れたりしたんだよ!?」


「だって……可哀そうじゃない! 大洋は苦しんでいたのよ!?

息子が困っていると聞けば、母親ならなんとかしたいと思うのが普通でしょ!?

もしも大洋が我慢できずに、性犯罪に手を出したらどうするの!?」


「だからって……なんで大洋と行為するなんて決断になるんだよ。

お前……自分が何をしたのかわかっているのか!?」


「わっ私が何をしたというの!?」


「何をしただと!? 血の繋がった母親と息子が体を重ねてんだぞ!? それがどれだけ常識を逸脱したことなのかわからないのか!? お前はいつからそんな救いようのない馬鹿に陥ったんだ!?」


 俺は感情を抑えきれずに声を荒げた。

浮気嫁に対する怒りというよりも……親としての責任を放棄して子供に歪んだ性体験を経験させた無責任さに腹を立てていた。


「やっやめろよ、父さん。 母さんにそこまで言わなくてもいいじゃないか」


 そう言って俺と瑞希の間に割り込んできたのは大洋だった。

セリフだけ聞けば、激高している父親から母親を守る息子に見えるだろうが……こいつも事の要因となって人間の1人だ。


「大洋! お前もお前だ! いくら多感な時期だからって、実の母親とこんなことをして自分が恥ずかしくないのか!?」


「母さんは苦しんでいた俺を助けてくれたんだ! 母さんが相手をしてくれなかったら、俺きっと……犯罪に手を染めていたと思う。 父さんはそれでもいいって言う気なの!?」


 大洋は追い詰められると極論を喚き散らすタイプだとは知っていたが……これは極端が過ぎる。


「そうじゃない! そもそもお前は瑞希を……母さんを女として見ているのか?」


 男女の行為というものは……互いを異性として求めているのが前提条件だ。

外見……年齢……内面……条件内容は人によってそれぞれ異なっている。

だがどれだけ条件に見合っていたとしても、相手が血の繋がった親であれば誰でも思い留まるはずだ。

だが大洋は瑞希を抱いた……瑞希からの提案とはいえ……大洋は彼女を受け入れた。

それはつまり……瑞希を女として見ていると言うことになる。

俺は……大洋に否定してほしかった。

今回のことは……堪えきれない性欲で狂ってしまったことで起きた事故だと……俺は大洋をもう1度信じたかった。

だが……。


「そうでなかったら……こんなことできないじゃないか……」


 ある意味それは……2人の行為を目撃したことよりもずっとショッキングだった。

一体何が大洋の常識を歪ませてしまったんだ……。

俺がもっとしっかり大洋と向き合っていれば……こんなことにはならなかったのか?

わからない……一体俺は……どうすればよかったんだ?

俺は……これからどうすればいいんだ?


「ねっねぇ……あなた。 もういいでしょう? こんなのちょっとした親子のスキンシップだとでも思えば……ね?」


 この期に及んで瑞希は訳の分からない言い訳を並び始めた。

そんな理屈が通るなら……世の中の性犯罪のほとんどがスキンシップで片付けられてしまうんじゃないか?


「そうだよ父さん。 それに俺達……家族じゃないか。 これからも3人で仲良くやっていこうよ」


 事の重大さがわかっていない大洋も……そんな能天気なことを言ってくる始末。

確かに俺が騒ぎ立てたりしなければ、このまま3人でいつまでも暮らしていけるだろう……。

でもこの様子からして……俺にバレたところで、この2人はこれからも体を重ね続けるだろう……。

だが瑞希も大洋も俺を家族として信頼している……だからこそ、タチが悪い。


「……」


 瑞希は俺の妻だ……。

その瑞希が俺以外の男と関係を持てばそれは不貞行為に当たる。

それだけなら話は簡単だが……その相手が実の息子である大洋であれば話は全く次元が異なる。

慰謝料だのなんだのはもうどうだっていい。

重要なのは1つ……。


”俺はこのまま瑞希と大洋を家族として受け入れることができるか?”


 俺は何度も自問自答した。

息子のためとはいえ、人として許されないことをした瑞希……。

男としての本能故とはいえ、俺の親心を裏切った大洋……。

俺が心を広く持って、2人を許せば話はこれで終わりだ。

だが許しを与えたところで、2人の関係はきっとこのまま。

いずれ大洋が結婚して子供を授かれば、歪んだ常識が少しは修正されるやもしれない。

だがもし、関係が継続していれば……その時に1番傷つくのは大洋の家族だ。


「瑞希……」


 考えに考え抜いた結果……俺は腹をくくって瑞希に声を掛けた。


「何? あなた」


「離婚しよう……親権はお前に渡す」


 俺は……長年歩み続けていた家族としての人生にピリオドを打つことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妻を実の息子に寝取られた俺は傷心のまま田舎に帰るも、そこで息子の推しアイドルと友達になる。 息子は俺達の関係を妬み、息子に捨てられた妻は復縁を求めるが俺には何もできないよ。 panpan @027

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画