第5話

 幻想の森が「機関砲の夏」の撤去を決めたのは、それからすぐのことだった。

 とはいっても、故障が原因ではない。現に「機関砲の夏」は、青色の光を放ちながら、何の問題もなく稼働している。さも自分が幻想の森の門番だと主張するように。

 当たらない、という苦情が殺到したのも、撤去理由の一つではあった。だが主な原因ではない。いや、間接的な主要原因、とでも言い表すべきか。

 結局のところ、店側が保身に走ったのだ。

 幻想の森の「機関砲の夏」が当たらないのは、常連客なら誰しもが知るところとなっていた。同時に、それは店側の設定が厳しいからだと解釈された。

 身に覚えのない不名誉、冤罪。しかし証明する術はない。だから撤去する他ない。青く輝く照明の電気代を、撤去の表向きの理由として。

 客足が遠のくにつれて、夏海は暇を持て余すようになった。Aを除けば、常連は誰一人として来ない。終わりが近いのだと、それとなく悟る。

 ただ一度でいいから、Aに大当たりを与えてやりたい。笑顔が見たい。

 例のごとく、基板を乗っ取ろうとした。だが、長い間、基板の全体に触れていなかったものだから、掌握の手順を忘れてしまっていた。彼女が支配するのは、確率低下の回路だけ。

 基板全体の統治は、結局、叶わなかった。

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