第十一章:扉の向こうの真実
塔の奥へと続く新たな道は、これまでの空間とは異なる雰囲気を放っていた。道の両側には無数の青白い灯火が並び、その光は静かに揺れている。その間を吹き抜ける冷たい風が、優真の背筋に僅かな緊張を走らせた。
「今度はどんな試練だ……?」
彼は慎重に鏡を握りしめながら歩みを進めた。道の終わりには巨大な扉が立ちはだかっており、その表面には複雑な文様が刻まれていた。それらは動いているようにも見え、どこか生き物のような不気味さを感じさせた。
鏡がまた強く振動し始める。それは「進め」という合図のように思えた。
「お前、本当に容赦ないな……。」
優真は深い息をつき、扉に手をかけた。その瞬間、扉がゆっくりと開き、眩い光が彼を包み込んだ。
扉の向こうに広がっていたのは、壮大な空間だった。そこはまるで宇宙のように無限に広がっており、足元には無数の星のような光が漂っている。空間全体が青白い光で満たされ、その中心には巨大な鏡が浮かんでいた。
「……これは……?」
その鏡は、優真が持つものとは全く異なるスケールで、空間全体を支配しているように見えた。その表面には無数の光景が映し出されており、それらは現実とも幻影ともつかないものだった。
「これが鏡の本当の姿か……?」
優真が鏡に近づこうとした瞬間、空間全体が低い音を立てて震え始めた。その揺れは次第に強まり、足元の星々が割れ、暗黒の霧が立ち上る。
霧の中から現れたのは、これまでに見たどの敵とも異なる存在だった。それは人の形をしていたが、その顔には無数の目があり、それぞれが赤い光を放っていた。体全体は黒い鎧に覆われ、その手には巨大な双刃が握られていた。
「お前がこの場所を守る最後の番人か……!」
優真は鏡を構え、体中に力を巡らせた。だが、その存在が放つ威圧感は圧倒的で、彼の体は自然と震えを覚えた。
「試練を乗り越えた先に待つもの、それが力の真実……。お前が本当に相応しいか、試させてもらう。」
低く響く声が空間全体にこだました。その声と同時に、その存在が一瞬で優真との距離を詰め、双刃を振り下ろした。
「速い!」
優真は咄嗟に鏡の光の盾を展開したが、その一撃は盾を砕き、彼の体を後方に吹き飛ばした。
「くそっ……強すぎる!」
全身に走る痛みを抑えながら立ち上がると、その存在は再び動き出していた。優真は鏡の力を全開にして光の刃を放ったが、その攻撃は敵の鎧に弾かれてしまった。
「……どうすれば……!」
彼は焦りを感じながらも必死に攻撃を繰り返したが、相手は全く怯む様子を見せなかった。
その時、鏡が再び強烈な光を放ち始めた。その光が優真の体を包み込み、耳元に囁く声が聞こえた。
「恐れるな。この力を完全に受け入れた時、お前は真の継承者となる。」
「完全に……?」
その言葉の意味を理解する間もなく、鏡の光が彼の体に流れ込み、全身を青白い炎のように包み込んだ。その感覚は、これまでとは比べ物にならないほど強烈で、同時に温かいものだった。
「これが……俺の力……!」
優真は新たな力を手に入れたことを確信し、再び敵に向かって突進した。光の刃はこれまで以上に鋭く、敵の鎧を貫き、その動きを止めた。
「……終わりだ!」
彼は全力で最後の一撃を放ち、その存在を完全に打ち破った。光が爆発し、霧が空間全体から消え去った。
静寂が戻ると、優真は膝をつき、荒い息を整えた。彼の前には巨大な鏡がなおも浮かんでおり、その表面には新たな光景が映し出されていた。それは、八坂村と神域が繋がる瞬間の映像だった。
「これが……鏡が俺に見せたかったものなのか。」
彼が鏡に近づくと、その表面が再び光り始めた。そして、彼の手に持つ鏡がそれに呼応し、二つの鏡が共鳴するように輝きを増していった。
その時、空間全体が再び震え始め、裂け目の中に新たな道が現れた。それは、さらに奥深く、鏡の真実に迫る場所へと続いているようだった。
「まだ終わらないのか……。」
優真は深い息をつきながら立ち上がり、鏡を握りしめた。
「どんな真実が待っていようと、俺は最後まで進む。」
彼の瞳には、新たな決意と覚悟が宿っていた。
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