第六章:未知なる導き
優真が祭壇の玉を手にした瞬間、体中に青白い光が流れ込み、その力が全身を駆け巡るのを感じた。それは単なる力の解放ではなく、彼の中に何か新しい知識や感覚を植え付けるようだった。
「……これが、鏡の力……?」
手のひらを見つめながら、優真は自分の中にある変化を感じ取ろうとしていた。だが、その余韻に浸る間もなく、広場全体がまたしても低い音を立てて揺れ始めた。
彼が立ち上がったその時、祭壇の背後にあった巨大な石壁がゆっくりと裂け、そこから新たな道が現れた。その道の向こうには、さらに濃密な霧が漂い、青白い光が点滅している。
「……行けってことかよ。」
優真は深い息をつき、手にした鏡を握りしめながら、その道へと一歩足を踏み出した。
道の先に進むと、空気はさらに冷たくなり、霧の中に奇妙な囁き声が聞こえるようになった。それは耳元で囁くような声で、何かを誘うような響きを持っていた。
「……誰だ?」
優真は周囲を見渡したが、声の主らしきものは見当たらない。ただ霧が揺れるだけで、人影はどこにもない。
「この道を選んだか……鏡の継承者よ。」
その声ははっきりと耳に届き、優真の胸に冷たい恐怖が広がった。
「……誰なんだ!出てこいよ!」
叫びながらも、その声の方向へと進むことしかできなかった。足元の地面はざらざらとした黒い岩で、歩くたびに微かな音を立てていた。その音がやがて遠くからの響きに混じり、次第に優真の目の前に何かが浮かび上がってきた。
それは巨大な扉だった。
扉には無数の文様が刻まれ、中央には鏡と同じ青白い光が脈動していた。その光は、優真が近づくにつれてさらに強く輝き始めた。
「また……試練か。」
優真は鏡を構え、慎重に扉を押した。扉は低い音を立てながらゆっくりと開き、彼の前に新たな空間が広がった。
中は、どこか古びた神殿のようだった。石造りの壁と天井には、無数の光る文様が描かれており、それが空間全体を淡い光で照らしている。
「ここは……一体……?」
彼が一歩足を踏み入れた瞬間、空間全体が揺れ、足元の床に何かが浮かび上がった。それは、巨大な魔法陣のような文様だった。その文様が青白く輝き始め、次の瞬間、中央に一体の異形が現れた。
その異形は、これまでの怪物たちとは明らかに違っていた。全身を漆黒の鎧で覆い、手には巨大な刃を握りしめている。その姿はまるで騎士のようだったが、その目には冷たく光る赤い光が宿っていた。
「……なんだよ、こいつ。」
優真が身構えると、その異形は無言のまま剣を振り上げ、一気に優真に向かって突進してきた。その速度はこれまでの怪物とは比べものにならず、彼は咄嗟に鏡を構えてその一撃を受け止めた。
「っ……重い!」
鏡の力を全開にしても、その剣圧は優真の体を押し戻すほど強力だった。彼は必死に耐えながら反撃の隙を狙ったが、異形の騎士は連続して攻撃を繰り出してきた。
「くそっ……!」
優真は鏡の力を解放し、光の刃を放った。しかし、異形の騎士はその攻撃を盾で弾き返し、さらに強力な一撃を繰り出してきた。
「……何なんだ、こいつ……!」
優真は全力でその攻撃をかわしながらも、次第に追い詰められていった。彼の体力は限界に近づいており、鏡の力を使うたびに全身に激しい痛みが走った。
その時、鏡が突然強く光を放ち、優真の手に熱を伝えた。その光が彼の体に流れ込み、彼の意識を新たな感覚で満たした。
「これが……鏡の力の本当の形……?」
その瞬間、優真の体は鏡と完全に同調し、光が彼の周囲に渦を巻くように広がった。彼はその力を振り絞り、一気に反撃に転じた。
優真の光の刃は、異形の騎士の鎧を貫き、その動きを止めた。騎士は低い唸り声を上げながら崩れ落ち、黒い霧となって消えた。
静寂が戻った空間の中、優真は膝をつき、荒い息を整えた。全身は痛みで満ちていたが、彼の胸には新たな確信が宿っていた。
「……俺は、この力を使いこなす。」
彼がそう呟いた時、神殿の奥に新たな扉が現れた。その扉は彼をさらに深い試練へと導こうとしているようだった。
「待ってろよ……絶対にこの試練を突破してみせる。」
優真は鏡を握りしめ、新たな扉へと足を進めた。
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