幕間 ラフィスの日記2
『今日は魔王様が、リーファ帝国とシファス王国との戦いで御自らシファス軍の援軍として戦地へ赴いてくださいました。シファス王国軍はきっと深く感謝することでしょう。
(中略)
ああっ、今日この日記を書くのには、書かなければならないことがあったからでした。危うく目的を忘れるところでした。。危ない、危ない。今日、この日記を書こうと思ったのは、魔王様がとても、魔王様らしかったからなのです。いえ、普段からいつもどんな時でも威厳と部下への愛をもって接してくださる魔王様は、素晴らしいお方なのですが、今日は一段といつもよりも先代魔王様のような、残虐性を秘めておられました。なぜ、そう思ったのかといいますと、なんと魔王様は今まで私が背後についてくることをお許しになられていたのですが、今日、初めて私が付いていくことを拒んだのです。一体何があったのでしょうか。私が何かしてしまったのかと思い、そう聞きましたが、そうではない、と魔王様は言ってくださいました。なんと、一人で行かなくてはならない用事が地下にあるというのです。しかし、地下にあるのは牢獄のみ、ということは魔王様は牢獄に用があるのです。今まで一度も牢獄に行こうとしなかったあの魔王様が行こうとしていたのです。絶対何かがあると思い、私は魔王様を少し心配に思い、
そこで私は、魔王様に、あの人間どもを私も痛めつけてよろしいですか?と聞きました。あまりにも、その人間どもが羨まし___こほん、腹が立ったので。すると、魔王様は殺さない程度にな、と言ってくださったのです!なんとお心が広いのでしょうあれほど夢中になるほど痛めつけていた相手をこの私に譲ってくださるなんて。ああ、本当に魔王様は素晴らしい方だ。私は改めてそう思いました。そして、今から私はその醜く愚かな人間どもに身の程を思い知らせてやろうと思います。ふふっ。さあ、どうやって痛めつけましょうか。』
そこまでラフィスは書き終わると、日記帳をしまい、地下牢へ向かった。
――――
ぶるっと、背筋が凍るような寒気がする。
ああ、今日はほんとうにひどい一日だった。
あれが、魔王なのか。
あの、狂った笑い方をする女が。
本当に恐ろしかった。
血肉をえぐられ、死にそうになったら回復させられ、また痛めつけられる。
精神が崩壊しそうだった。
それでも壊れなかったのは、我妻___ミオの戦争が始まる前にかけてくれた精神強化魔法のおかげである。
ああ、本当に感謝だ。
でも、本当に体のあちこちが痛い。
魔王め、本当にふざけやがって。
「いつか絶対に復讐してやる___」
気が付いたら凍って動かなくなりかけている口でそう呟いていた。
「おや、誰にですか?」
牢屋の外の闇の中から、一人の男が現れた。緑の髪に緑の瞳で、美しい容姿だったが、その瞳の奥には強く深い怒りが潜んでいて、その表情は秘めた穏やかな笑みだった。すごく、恐ろしい者だった。
そして、その数分後、魔王城に声なき叫びが響き渡り、翌朝をひどくゆがんだ姿でルズやヒロイン、攻略対象達が迎えたのは言うまでもない。
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