第2話 魔王としてよみがえった悪役令嬢
知らないけれど、どこか懐かしい歌が聞こえる。
目が覚めると、そこは物語とかで描かれる、天界のような場所だった。
「あれ、、?」
どうしてだろうか。
今までなら、死んだら次の瞬間から自分の部屋にいる15歳の状態からまた、始まっていたのに。今回は違うのだろうか。
次で百回目だから、何か特別なアイテムをもらえたりとか、あったりするのだろうか。
「残念ながらそんな特別なアイテムとかはないですよ。すみませんね。」
背後から声がした。
振り向くと、そこにはいかにも、物語にでてきそうな見た目の天使もどきがいた。
「天使もどきじゃないですよ。本当に天使なんですよ。失礼ですね。」
どうやら私の心を読むことができるらしい。
人の心を読まずに対等に向き合おうとする天使としての誇りてきなものがないのだろうか。
「読もうとしなくても勝手に聞こえてくるんですよ。心の声がね。」
「あ、そうなんですね。」
何それチートじゃん。
「天使なので。」
「あ、そうですか。」
「ところでですね、あなたは理不尽にも何の罪も犯していないのに、何度も何度も断罪され、殺される、というループに先ほどまで陥っていたでしょう。」
「はい。」
そうだけれどこいつはそれと何か関係があるのだろうか。
「それは、こちらがその世界を管理する機械にウイルス―バグのようなものを侵入させてしまったせいなのです。」
「つまり、お前らのせいで何度もループしていて、理不尽に殺されていた、と?」
「はい、私たちだけの責任だけではありませんが、私たちにも責任はあるので、大変申し訳ありません。」
「あ、、そうなんだ。」
「なので、そのお詫びとして、次の生では、あなたの望みをかなえようかと。」
「何でもいいの?」
「はい、何でもどうぞ。」
何でもいいのならこいつらを困らせるようなことを言ってやろう。
「じゃあ、次の世界では最強にして頂戴。あと、今回までの記憶をすべて持ったまま、転生したいな。」
「かしこまりました。では、いってらっしゃい。」
少女の見た目の天使は、そう言った。
次の瞬間、私の視界は真っ暗になった。
――――
「あれ、ここは、どこだろう?」
目が覚めるとそこは、見慣れない部屋だった。
「魔王様、おはようございます。」
魔王、、? だれが?
「本日の予定は――」
角の生えた、物語に魔王側の者として出てきそうな男が、何やら話している。
「以上になります。」
誰なんだろう。こいつ。
とりあえず状況確認するか。
「出て行ってくれ。」
「はい。」
私の頼んだことを素直に聞いてくれた。
さて、状況を確認しようではないか。
いったい私はどんな姿になったんだ。
近くにあった鏡をのぞき込んでみる。
「ふむ。」
その鏡には、美しい女がうつっていた。濃い紫色の美しい角。紫色のさらさらとした美しい髪の毛。濃い赤い、たとえるならば、血の色をした瞳。
魔王のような見た目だ。
そう言えばさっきの者が魔王とか言ってたな。
誰のことだったんだろう。
とりあえず、机があるし、何か情報が得られるかもしれないから引き出しの中を見てみるか。
私はそう思い、机の一番上の引き出しを開けてみた。
日記帳が入っていた。
『あなたの名前は、魔王シャナル。』
まっさらな日記帳にそう文字が浮かび上がってきた。
「え? ちょっと待って、私、魔王なの?」
私がそう呟くと、
『ええ、そうよ。』
日記帳に返答が浮かび上がってきた。
「あなたは誰?」
『私は元々のあなたの肉体の持ち主。元、魔王よ。』
「私のこと、恨んでる?」
『全然。魔王としての生活にはうんざりしていたのよ。正直退屈で退屈で仕方がなかった。だから魔王としての生はあなたに譲ってあげる。』
「代わりに何をすればいいの?」
『私を、燃やしてほしいの。』
「どうして?」
『私、生まれ変わりたいのよ。魔王は不死身だわ。永遠に生きなければならない。私はそれを受け入れられない。そんな退屈なのは嫌なの。かといってこの日記帳の中も何もなくて、すごく退屈なの。だから、私を燃やして、生まれ変わらせてくれないかな。』
「いいわよ、そんなことでいいのなら。」
『この日記帳、特別な素材でできているから、普通の火では燃えないの。あなたが魔力で生み出した炎でしか燃やせないのよ。』
「魔力で炎を作れるの?」
『ええ、その方法をこれから教えるわね。』
その日記帳は、魔王の持っているスキルの使い方や、魔力の使い方などを教えてくれた。そして、今までどんなことがあったかなどの記憶の引継ぎなども行ってくれた。
「丁寧に教えてくれてありがとう。」
『いいえ、私は仕事を引き継ぐときはしっかり丁寧に教える主義なのよ。ちょっとした気まぐれだわ。あなたは私を燃やすことで救ってくれる。だから私もあなたのちょっとした助けになりたかったの。さあ、私を燃やして。』
「わかった。」
私はそう言うと、片手で炎を出し、その日記帳を燃やした。
日記帳は、ひどく醜い叫び声をあげて消えた。
少し罪悪感を覚えたが、燃やせといったのはそちらだ。
私はその言葉に従っただけで何もしていない。
そう心に言い聞かせた。
「魔王様、大丈夫ですか⁉」
先ほどの私の目覚めたときにいた者―ラフィスがそう言って部屋の中に駆け込んできた。
どうやら先ほどの悲鳴を聞いてのことならしい。
「ああ、大丈夫だよ。」
さっき、もともとのこの体の持ち主が、言っていた話からするとこいつ―ラフィスは私のことナメてそうなんだよね。あの日記の中にいた元、シャナルがあんまり残酷なことしてなかったからかな。だからナメられてるのかな。
なんか見た目も前世での悪役令嬢だったころの主人公に騙されていた攻略対象に似た見た目で、腹立つし、私の使える技の威力も気になるし、攻撃してみようかな。
私はそう思い、魔力を使った技はきっと威力強くて可哀想なことになると思ったので、とりあえず殴ってみることにした。
「えいっ。」
軽く殴ってみると、ラフィスは、面白いほどよく吹っ飛んだ。
「へっ⁉ 魔王様?」
どうやら状況がよくわかっていないらしい。
まあそりゃそうか。急に殴ったもんな。
混乱した様子でこちらを見ている。
まあここは素直に謝ってみるか。
「すまん、なんだか殴りたくなった。」
「え、、、あ、、はい。こちらこそすみませんでした。」
ラフィスはなんだか納得したような顔になって、逆に深く頭を下げて謝ってきた。何に対して謝っているのだろうか。あ、もしかして私のことナメていたことに対してかな。
それならまあ、私は心広いし、許してあげようかな。
「次からは気を付けるように。」
私は魔王っぽく偉そうに言ってみた。
「ははっ!」
ラフィスはそう言い、深々と私に対して頭を下げた。
攻略対象と似た見た目の者が頭を下げてるっていうのが、なんかいい気分。
ああ、早く物語の攻略対象や主人公たちを苦しめたい。
私はそう思い、その場から立ち去った。
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