幕間 ラフィスの日記
『私の名前は、ラフィス。
先代魔王様に、執事としてつかえていて、今の魔王様にもつかえさせていただいています。
それにしても今の魔王様は本当に素晴らしい方だった。
今までの私は何という勘違いをしていたのだろう、と今日実感した。
そのきっかけは何だったかというと、なんと魔王様は、今日御自らの手で私のことを殴ってくださったのだ。
魔王様が殴ってくださるまで私は、魔王様のことを自分はもしかしたら倒せるのでは? と思っていたのだ。本当に今から思うと思い違いも甚だしいですが。そして、あわよくば魔王様を倒して私が魔王になろうか、とまで思っていたのです。本っ当に過去の私に腹が立つのですが、そう思っていたのです。ですが、今日魔王様の殴ったあの拳の威力は、私がどんなに頑張ったって出せっこないほどの威力でした。魔王様は素晴らしいことに、今までは手をださず、私が自らの愚かさに気が付くのを待ってくれていたのです。ああなんと素晴らしいのでしょう。そして今日、そのことに気が付かないとてもとても愚かな私を、殴ることですくってくださったのです。ああなんて素晴らしい。魔王様、あなた様はなんて素晴らしい御方なんでしょう。あなた様が許してくださる限り、一生ついていきます。私はあなた様のしもべです。ああ、本当に素晴らしい。魔王様に栄光あれ。そして、魔王様のとてもとても広い御心に感謝を。
(中略)
そして本日、この日記を書いたのには魔王様をほめたたえたい気持ちがあったのもそうなのですが、一つ、懺悔したいことがあったからなのです。
それは、私が今まで魔王様の御容姿をとても気味が悪いと思っていたことです。魔王様の御容姿の内、とても美しく禍々しい魔王にふさわしいごつごつとした角のことを、私は今まで本当に気持ちが悪いと思っていたのです。本当にあの頃の私の目は節穴だったのでしょう。なんて見る目がないんだ、と今なら思います。本当に過去の私に腹が立ちます。そして、魔王様のあの紅い血のような美しい瞳のことを、性格と真逆ではないか、全く性格と会っていなくて気持ちが悪い色だ、なんて思っていたのです! ああ思い出すだけで腹立たしい。魔王様は、慈悲深くとても素晴らしい方であるが、あの瞳のように冷酷な一面も持っているであろう魔王にふさわしく素晴らしき御方だというのに。ああ、魔王様お許しください。どうか、そう考えていた過去の私のことを。いや、許してくださらなくてもいいですけど。私のことを許さず、私のことを憎むその美しい瞳を想像するだけでも、、ああっ、なんて美しい。
(中略)
いえ、私ごときのことを考えてそんな風にお心を乱させてはいけませんね。魔王様は、この世に存在するどんな者よりも素晴らしいのですから。』
ラフィスはそこまで日記に書くと、
「私は、なんか地味な見た目ですよね。」
と、呟いた。
「いめちぇん、とやらをしてみましょうか。」
せめて魔王様のそばに立たせていただくのだからその立場にふさわしき姿をせねば、とラフィスは思い、イメチェンをしようと思った。
そんな時、
「え⁉ イメチェン⁉いいじゃん、いいじゃん私のその手伝いをさせてよー!」
と言って、ラフィスのもとへやって来た魔王城の美容師がいたとかいなかったとか。
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