二章 ……愛されてるの?
あっという間に一年の月日がたった。
世はクリスマスシーズン。町のなかはどこもかしこも華やかなイルミネーションで彩られ、恋愛真っ最中のカップルたちが季節を無視して春爛漫の雰囲気を吹き散らしている。
――はああ~。さすがに疲れた。
そんな、どこもかしこも浮かれた雰囲気のクリスマスシーズンの町のなかを、
北海道に単身赴任している
そのために、一年で最大のイベントとも言えるクリスマスイベントは同僚に任せ、
――疲れた!
という思いはどうしようもない。
それもこれもすべては
――そこまでして、
ふと、そう思う。
その間、
そのあまりにも事務的な態度に、
――本当に愛されてるの?
という疑問がどうしても湧き出てしまう。
そもそも、
『まちがいなく優良物件だけど、『愛されている』っていう実感がもてない』
一〇人が一〇人、そう言ってはなれていったのだ。
――この人は愛情表現が下手なだけ。心のなかではあたしのことを愛してくれている。
そう思っていたから。しかし――。
――毎日、顔を合わせていた頃ならともかく、月に一、二度しか会えなくなっても表情ひとつ動かさないなんて……さすがに、疑っちゃうわ。
まして、いまはクリスマスシーズン。世の中すべてが浮かれ騒ぎ、カップルというカップルが独り者の苦しみも忘れてハートマークを飛ばしまくっている時期。そんなアツアツラブラブな様子を見ていれば、
――あたしも、あんなふうにアツい恋愛をしてみたかった。
という思いもわき起こってくる。
すべてがあまりにも事務的。
恋人だから。
夫婦だから。
義務としてイベントをこなしている。
そんなふうに思えてしまう。
常にそつなく完璧に演出してくれるけど、生の愛情を感じられない。
贅沢なのはわかっている。
わがままだということも承知している。
そんな、世の中にめったにいない夫だというのに、こんなことで不満を感じるなんて……。
そんな自分に嫌気がさす。
クリスマスに浮かれるカップルたちを見ているとやはり、心のどこかに隙間を感じる。冷たい風が吹いてくるのがわかる。
愛されたい。
愛したい。
そんな思いがどうしようもなく押しよせてくる。
――だからって、
そう思って――。
ハッとなった。
ゾッとした。
「な、なに考えてるの、あたし! それじゃ完全な浮気じゃない。そんなことしていいいわけないでしょおっ!」
心に吹いたすきま風。
頭に差した魔。
それを振り払うように、
「さ、さあ、明日には
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