第三章 水の戯れ

ラヴェルの「水の戯れ」が流れている。いつもよりも少しだけ、流れ始める時間が遅かった。

 まだ薄暗い寮舎内の天井に赤い光がするすると流れた。白くぼやけた空を背景に、レンガ調の校舎が見える。その足元を、大人たちが走っていく。

 赤い光がぴたりと止まる。寮舎で眠る生徒たちに勘付かれないよう、するすると、一台の車が学園の門を出て行った。

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