ポインセチア「赤い思い」
雪がちらつく夜、ミホは小さな花屋の前で足を止めた。
ショーウィンドウの中に飾られた真っ赤なポインセチアが優しい光に照らされていた。どこか温かさを感じるその花は、冷えきったミホの心をそっと包み込むようだった。
ミホは最近、仕事で大きなミスをしてしまい、周囲の期待を裏切ったような気がしていた。ずっと張り詰めていた心が一気に崩れ、何もかもが空回りしているように感じていた。そんな時、この赤い花が目に留まったのだ。
「ポインセチア、素敵ですよね」
店主が出てきて微笑みながら話しかけてきた。
「この花を見ると、なんだか特別な気持ちになりますよ。赤い色は、誰かを思いやる心を表しているとも言われているんです」
ミホはその言葉に少し驚いた。
誰かを思いやる心――そんなことを最近忘れていたような気がした。自分のことで精一杯で、大切な人たちに向けるべき優しさを見失っていた。
「大切な人に贈るのもいいけれど、自分のために買ってもいいんですよ」
店主が続けた。
「この花は、幸せを願う気持ちを映し出すものですから」
みほはその言葉に背中を押されるようにポインセチアを一鉢購入した。
帰宅後は窓辺にその赤い花を置いた。部屋の中に広がる静かな空間に鮮やかな色が優しい灯りのように輝いていた。
それを見ているうちに、ミホの中に小さな気持ちが芽生えた。自分の幸せを願うことも、誰かの幸せを願うことも、同じくらい大切なことだと気づいたのだ。ポインセチアがそっと教えてくれたような気がした。
「ポンセンチア」
花言葉
・祝福・幸福を願う
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