とりあえず書かれた手紙への返信

前略友だち様


不思議なお手紙、誠に不可思議に読ませていただきました。折られた孔雀の羽は、丁寧に直し、1つの赤い種へと姿を変えました。

いつか素敵な鳥となって、またあなたの元へと帰って行くでしょう。

あなたという存在を、私はついぞお見かけしたことがありません。はたまたすっかり忘れてしまっているのか、またはあなたに顔がないのか、あったこともないのか。そのどれかでしょうね。だとしても、たぶんあなたは私のともだちで、私はあなたの真の友なのです。

また夜が過ぎて行きます。

夜はしきりに酸素を吸い、自分の丈を大きく見せようと必死になり、中に含んだ小さな電球を奇妙に並べて見せるのです。フクロウが、ちゅんと一声。すると、空の電球が変な音を立てて切れます。フクロウがしっかりと鳴けるようになったころ、朝の光が大きな火を持って、夜の藍を塗り潰して行きます。

さて、また朝が過ぎ、また穴熊が寝付くころ、

赤い種が赤い葉をつけるときに、この手紙が読まれることを祈ります


あなたの友より

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羊の詩集 亜夷舞モコ/えず @ezu_yoryo

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