午後四時四〇分


「何よ、これ!」


 車に乗り、館の敷地を出ようとして、思わず叫んだ。来た道を塞ぐようにしてトラックが停められていた。先ほど館の駐車場に停められていたトラックだった。

 私のおんぼろ軽自動車ではどうにもできないと判断し、仕方なく来た方向と逆方向へ車を走らせた。


 誰があのトラックを動かしたのかと自問し、すぐに答えが出た。シャチだ。私がタイガと一緒に二階へ上がった時、彼は階下へ降りて行った。そのまま玄関から外に出てトラックを動かしたのだろう。思わず私はバックミラーを覗いたが、細い道とその両脇に迫る木々が見えるのみだ。


 スマホのナビアプリで目的地を設定し、起動した。この辺りはずっと細い一本道しか無いせいで、かなりの遠回りになってしまいそうだ。


 落ち着け、落ち着くのよ私。そう自身に言い聞かせた。静かで、か細い雨足あまあしが視界を埋め始め、車内は静かな雨音とワイパーの作動音で満たされた。


 一時間ほど走った後だった。視界に何かが飛び込んできた。人だ、と気付いた瞬間に思い切りブレーキを踏み込んだ。


 人が路面に倒れこむようにして飛び出す。白い衣服がぐんぐんと目の前、フロントに迫り、ボディに接触し、ボールのように弾き飛ばされる。鈍い音と重い衝撃で、車体ごと私の身体が揺れる。跳ね飛ばされたそれは再び手前へ迫り、視界の下方へと消え、直後にガタン、ガタンと二回、重い衝撃が車内を襲った。


 永遠にも思える刹那の後、私の車は大きくつんのめってから停まった。

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