3
午後四時四〇分
「何よ、これ!」
車に乗り、館の敷地を出ようとして、思わず叫んだ。来た道を塞ぐようにしてトラックが停められていた。先ほど館の駐車場に停められていたトラックだった。
私のおんぼろ軽自動車ではどうにもできないと判断し、仕方なく来た方向と逆方向へ車を走らせた。
誰があのトラックを動かしたのかと自問し、すぐに答えが出た。シャチだ。私がタイガと一緒に二階へ上がった時、彼は階下へ降りて行った。そのまま玄関から外に出てトラックを動かしたのだろう。思わず私はバックミラーを覗いたが、細い道とその両脇に迫る木々が見えるのみだ。
スマホのナビアプリで目的地を設定し、起動した。この辺りはずっと細い一本道しか無いせいで、かなりの遠回りになってしまいそうだ。
落ち着け、落ち着くのよ私。そう自身に言い聞かせた。静かで、か細い
一時間ほど走った後だった。視界に何かが飛び込んできた。人だ、と気付いた瞬間に思い切りブレーキを踏み込んだ。
人が路面に倒れこむようにして飛び出す。白い衣服がぐんぐんと目の前、フロントに迫り、ボディに接触し、ボールのように弾き飛ばされる。鈍い音と重い衝撃で、車体ごと私の身体が揺れる。跳ね飛ばされたそれは再び手前へ迫り、視界の下方へと消え、直後にガタン、ガタンと二回、重い衝撃が車内を襲った。
永遠にも思える刹那の後、私の車は大きくつんのめってから停まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます