第3話 三回目 次男編
上二人の子育てがある程度落ち着いてきたころ。
旦那と話した、もう一人いてもいいかもしれないね?
しかし、二人目はすんなり出来たのだが三人目はなかなか授かれなかった。
授かっても初期流産という残念なこともあり、まぁ授かれたらいいよねのスタンスで半ばあきらめかけていたところ。
長女から五年空いて、三度目妊婦生活に突入した。
妊娠が分かった時、長男は七歳、長女は五歳。
この子が生まれるときには長男八歳、長女は六歳になる。
自分のことはある程度自分で出来る上の子たちに、お腹が大きくなる前に説明した。
「お腹の中に弟か妹が居ます。冬には産まれるから、よろしく頼む。君らも戦力として頼りにしている」という話をした。
前回頑張りすぎた結果が、早産の傾向と前駆陣痛と自宅安静だった私はこのころにはすでにパートだが働いていたからだ。
子どもたちの周囲の子には弟や妹が生まれた家庭も多く、二人は話を飲み込むのも早かった。
「じゃあ、軽いゴミの日は朝に僕がごみ捨てするね」と長男は言い、お腹が大きくなってくるとお風呂掃除も率先して担当してくれた。
今も優しい長男は、その時からとっても優しかった。
長女は、率先して食べ終わったお皿を運んだりおなかの赤ちゃんに本を読んだりと産まれることを楽しみにしていた。
自分がお姉ちゃんになることをとっても楽しみにしていた。
そして、私自身は三度目の妊娠にして初めて炊飯器の匂いがダメになった。
「これがうわさに聞く、米が炊ける匂いがダメと言うやつか」となったものです。
初期のつわりの時期は炊飯中は子どもの外遊びに付き合ってどうにかしのいだ。
妊娠安定期から後期に至るまでは、問題もなくむしろとっても順調で。
パートのお仕事も配慮を頂きながら十二月の頭まで続けることができた。
出産予定日は一月十三日だが、二度の経験から予定日より早いのは間違いないと踏んでいた。
なので、冬休みに入ったクリスマスの翌日上二人を実家に預けるために送り届けた。
臨月なので、まぁまぁしんどかったものの運転は旦那だったしと移動して実家に預けた。
三人目の出産は上の子の学校も考えて自宅の近くの産婦人科で産み、里帰りナシと決まっていたのだ。
それを選択できたのもひとえに上の子たちが大きくなっていたからだと言える。
しかし、親のサポートナシ、頼るのは旦那だけだが、旦那は新生児育児は三人目にしてほぼ初体験だ。
こりゃ、大変になると覚悟しての出産。
年内に産まれるかと思っていたが年内最後の検診日。
「こりゃ年越してからの出産だね」と担当医にいわれ、お腹が大きく苦しかったのでやや絶望したものでした。
それでも気を取り直し、子どもたちのいない初めての夫婦での年越しを、のんびりと迎え。
大きなおなかで元旦の初詣も済ませた翌日。
おしるしが出た!
これなら今日、明日には出産だと希望が見えました。
上の子たちの冬休み中に出産、退院するためには三が日のうちか遅くとも四日には出産せねばならなかったのです。
そのため、お腹には三日、三日に出ておいでとカレンダーを指さしながら言っていました。
なんて空気の読める子!と感心したのは言うまでもなく、カレンダーで指差しを見かけて実行してみた自分と、それに答えた次男に驚きを隠せませんでした。
おしるし後は少し、お腹が張るものの不定期で。
様子を見ながら、就寝。
しかし、朝方四時、お腹の痛みで起きる。
三回目の出産、流石にわかる。
こりゃ陣痛の始まりだ。
とりあえずまだ八分間隔だから様子見。
隣で寝ている旦那は起こさずに、なんとかお布団の中で痛みと時間の計測開始。
朝方五時過ぎには五分間隔に移行。
さすがにすぐではないけれどそろそろ病院に連絡しようというところで旦那を起こす。
病院に連絡を入れると、準備してご来院くださいとのこと。
入院セットと、旦那の身支度が終わるまでのんびり陣痛の波を送りつつ、病院へ。
診察をすると、陣痛は来ているし、子宮口は四センチのため入院決定。
旦那は一旦帰宅することに。立ち合いの予定のため、また連絡を入れることを伝える。
そうして入院、陣痛室での待機となりよしよし、いい波だなと思うものの強さが足りない、なんならやや不定期に。
これは初産の再来では?と難産の恐怖がよぎる。
朝の九時で担当医の診察。
「微弱陣痛体質だったよね?ここで点滴の促進剤使えばお昼前には産まれると思うけれど、どうする?」という一言に「促進剤、使いましょう!お願いします」とはっきり答える私。
その頃に上の子たちを預けている実家にようやく今日産まれる、今病院の連絡を入れる。
そして旦那に促進剤を使うから、お昼前には産まれるので立ち会うならそろそろ病院へと言う連絡を促進剤を点滴に追加されたところで入れる。
旦那は出勤していた職場から帰宅して、十一時には病院へ到着。
その頃には陣痛待機室で、強く短くなる陣痛の波に「よしよし、この調子。これが進まないと産まれないのよ」とやっぱりベッドの柵を握って波をやり過ごす。
十一時半、助産師さんの内心で「子宮口九センチね分娩室に行きましょう」
の一言で、分娩室へ移動。
促進剤使っての出産は二度目だけれど、飲み薬と点滴のセットではなく点滴だけのためか、はたまた経験のためか呼吸も落ち着きつつ分娩台までしっかり歩いて到着。
分娩台で準備待ちの間もうまいこと呼吸法で痛みを逃していると助産師さんが「さすが三回目のママさんだね、落ち着いててえらいわ」と言われる。
「さ、旦那さんも来たわよ。内診するわね。うん、子宮口全開、いきんでいいわよ」
との声掛けに六年ぶりでややいきみを忘れているものの、やっと産めるぜで頑張る。
助産師さんが褒め上手なので「そうそう、上手ね。さすがだわ。はい、あともう一回頑張ろうね」などと声をかけてくれて、旦那は額から流れる汗をしっかりタオルで拭ってアシスト。
立ち合いも二度目だから旦那も落ち着いたもんでした。
「はい、もう短い呼吸で大丈夫よ」
の声に、あ、頭出たわと実感。
その後はスルンとお生まれになりましたが、三人目にして一番会陰が痛い。
その原因は後々判明。
「二千八百グラムの男の子だけれど、頭の大きさが三千グラム越えの子と一緒だわ。どおりで頭が出にくかったわけね」とのことでした。
そりゃ、会陰裂けますよね。
ちくちく縫われて、地味に痛い。
入院三日間はドーナツクッションのお世話になりました。
そして、担当医の読み通り正午の五分前に産まれたのでベテランの産婦人科医はすごいなと思ったもんでした。
そして里帰りナシ、上の子たちのお世話プラス新生児の待ったなし生活が開幕されたのですが、其れもまた今度ということで。
三回の出産体験レポート。
三回出産してもどれも同じ出産はないし、経過もないのが出産であります。
この体験が少しでも、これからの出産においてちょっとした参考になることを願って。
完
出産してみること三回。出産体験レポートエッセイ 織原深雪 @miyukiorihara
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