最強の力

　彼は異世界に召喚された青年だった。最初に不老不死という能力を授かった彼は、素晴らしい冒険者たちと出逢った。彼らと共に旅をし、能力を獲得していった。例えば、魔法を覚え、剣を覚えた。

　行く先々で、人々は彼の素晴らしい能力に驚き、魅了された。仲間の信頼を獲得し、王から特別な報酬を得た。

　彼の人生は、前世よりもより豊かに思えた。素晴らしい能力に感謝しながら、旅を続けた。笑ったことも、泣いたこともあったけれど、仲間との旅は素晴らしく、どれもかけがえのない素晴らしい思い出だった。

　素晴らしい仲間たちとの素晴らしい冒険で世界最強になった彼にとって、魔王を討伐するのは、クッキーを割るのと大差なかった。

　世界は魔王という存在が消えたことで、人間同士の戦争が再び起こるまで平和になった。

　しばらく経つと彼の仲間たちは老い、1人、また1人と死んでいった。

　200年経つ頃には、すでの彼のことも、そして仲間たちのことも、伝説として語られるようになったていた。

　500年が経ち、人々は彼に恐れを抱いた。魔王を討伐した彼は、自分の能力に酔いしれていたのだ。

　800年が経ち、彼は孤独だった。

　ついに1000年経ち、彼は自分の能力を恨んだ。