第二話 偲月の盃

第6話

「夏山はやっぱり良いよなぁ」


今年も連休に祖母宅のあった地方へと足を運ぶ。


昨年に引き続き、避暑がてらに田舎の空気を感じたくなり、お墓参りも兼ねての来訪である。


小学生の時は、よく夏休みになれば祖母のいるこの田舎に遊びに来ていたが、中学に入ってからは疎遠になりがちになっていた。


そんな中、祖母は高校生の頃亡くなり、新盆の法要以来ぶりであった。

(ちなみに三回忌は簡素にということで、両親だけ参加した)


なぜ再び訪ねようと思ったのは、昨年の夏に、不思議で奇妙な体験をしたからだ。


現在のところ、これより摩訶不思議な経験は無いことを断っておく。



あれはそう、夜中の出来事だったーーーー


仕事を終え、自宅アパートに戻って来た。


(たまにはゆっくり湯でも浸かるか…)


そう思い立ち、歩いて近くの銭湯に向かう。


アパートのある住宅地を抜けると、田舎程ではないが、まだ田んぼが見られるとこでもあり、その通り沿いを電車が走っている。


車が移動手段のメインではあるが、飲みに出かけるために隣接の市外地から、この電車に乗って来る人もいる。


昔よりはどうしても少なくはなったが、それでも代行を頼むよりは安く済むし、そんなに深夜まで飲み歩く人はそう多くない。


最終は途中下車になってしまうのを除けば、まだまだ現役として役立ててくれている……といった所だ。


銭湯と言っても昔のとは違い、ちゃんと温泉が湧き出る、源泉掛け流しの風呂になっている。


そこで入る前に、併設の食堂で夕御飯を掻きこみ、流れるバラエティを余所に、スマホで時事ネタを適当に見ながら一休みし、頃合いを見計らってようやく、風呂に浸かった。


久々の温泉に首まで浸かれたことの満足にくわえ、日頃の疲れや汗をかいた体をきれいさっぱり洗い流せたのは、なんとも心地好いものだ。


アパートの風呂にもたまには入るが、この時季はどうしてもシャワーで済ましてしまうのもあるのと、やはり手狭なのが原因して長居する気にはなれない。


独り暮らし用の部屋というわけでは無いが、ここだけに限らず言えると思うのは、風呂や洗面所、台所といった水回りは総じて“せまい”とこだ。


一軒家に個人が住むのと違い、限られた広さに数人が個別の住宅を構えているようなものなのだから、無理もない。


けどもし仮に、家を建てるとしたら水回りは絶対に広さを確保することをお薦めする。


掃除一つするにも水を使うのに、せまいと効率悪い上に、身動きしにくい。


これは男とか女とか関係なく、割かし皆が思うところでは無いかと感じたまでだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る