第4話

彼は初めての彼女だからなのか、親切に気を配っては彼女の望む事はなるべく叶えてきた。


一方彼女の方はと云うと、親切で優しい人当たりの良い彼に対して少しずつ横着になっていた。


彼もそんな彼女の態度に段々嫌気が差してきたのか、素っ気無い態度をとるようになり、それとなく別れを示唆するも謝ってはすがり付く彼女を見ては情が出てしまい、先伸ばしで関係を続けていた。


だが誤魔化しが通用しなくなる日が彼女に訪れる。


彼には新しく気になる女性“エミ”が現れたのだ。


彼女は学部は違うが同じ大学の同好会で知り合ったそうだ。


その同好会は所謂イワユル異性との出会いの場になっており、彼は友人の半ば強引な誘いで致し方なく参加したらしい。


どちらかと言えば奥手な彼がこの手の会に参加した事自体が意外で、隣で聞いてた私は思わず彼に振り向いてしまったが、そんな私に構わず話を続けた。


慣れない場に最初は戸惑っていた彼も、よくある学生ならではの会話から始まって行く内に徐々に打ち解けて行き、その中で彼女とも話す機会が廻ってきたそうだ。


あまり異性との交流経験が無かった彼は、緊張の為ほとんど話せずに何時しか彼女の話を聞く側になっていた。


一方で彼女の方はそんな彼に安堵を感じ、他愛ない話が出来る彼との距離感に嬉しくなり、自然と好意を寄せていく。


気が滅入っていた当時の彼にとっては良い気晴らしになり、何より新鮮だった。


半ば固定された環境から脱け出せた気分もそうだが、惰性の付き合いをしてる彼女から距離を置ける切っ掛けになったのが何より大きかった。


それから次第に気持ちが落ち着き始めた頃、何度か顔を会わせて行く内にエミに心を傾ける様になっていた。


彼女の方も彼と過ごす時間を重ねる事に想いを募らせ、その事を知った彼は終に惰性で付き合っている彼女との別れを決断するに至った。


会う回数が減っていた事に不満を感じていたサヤカは案の定、勘繰る気持ちをぶつけては罵声を浴びせ彼から持ち掛けられた別れ話に、頑なに取り合わなかった。


けれど、そんな彼女を見ても微動だにしない彼の反応に彼女の方もつい自棄ヤケになり、この夏に開かれる同好会行事の参加を条件に別れる事を承諾したのだった。


同好会行事の参加理由ーーーそれは参加者の殆どが交際相手を連れてくると聞いて、既に参加が決まっていた彼等にとっても決まりが悪いと云う訳で在った。

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