第3話 季節が変わってしまう
次の日、また今日も凪先輩に会いに行った。
だが、凪先輩は神社に居なかった。
出かけてしまったのだろうか。
俺はその日は仕方なく家に帰った。
だが、居なかった日はその日だけじゃなかった。
毎日神社に行っても凪先輩は現れなかった。
俺はすごく心配になった。
そして、春終わりの今日も神社へ向かった。
「あ、涼久しぶり」
そこには俺の名前を呼んで微笑む凪先輩がいた。
「どこ行ってたの?」
そう俺が聞くと
「秘密」
と答えた。
だが、
「じゃあね」
と言って凪先輩は俺の目の前で消えた。
消えると言っても、
あの桜吹雪に視界を奪われたあと、
凪先輩はその場にいなかったのだ。
まるで、春が終わるのと同時に消えたような。
桜は若葉になっていた。
あぁ、夏が始まったのだ。
その日は昼から学校があったため、
ゆゆコンビといつものように学校へ向かった。
「あのさ、凪先輩が消えたんだよね」
「ん?凪先輩?」
「凪先輩って誰?」
え?どういうことだろうか。
「え、凪先輩ってうちの学校の先輩だけど?」
「そんな先輩うちの学校にいないよ?」
何故か、
凪先輩という存在が元々居なかったような....。
「ちょ、今日俺休むわ!!」
「え!?」
「先生に言っといて!!!」
そう言って俺は神社に向かった。
俺は神社に着いたあと、
凪先輩から教わった花の花言葉を急いで調べた。
すると、
勿忘草の花言葉は " 私を忘れないで " 。
そして、
修禅寺寒桜の花言葉は " 貴方に微笑む "
だった。
ほかの花の花言葉も調べたが、
何故だか俺の頭の中には凪先輩の姿があった。
しかし、勿忘草の花言葉だけ少し違和感を感じた。
他の花は凪先輩自体を表しているようなのに、
勿忘草だけはメッセージみたいなものだった。
俺は若葉を生い茂った修禅寺寒桜の幹に手を添えて
「俺は忘れないよ。永遠に」
そう言い、心に誓った。
すると、風が吹いて若葉の音が鳴り響く。
それと同時に
『ありがとう』
そう聞こえた気がした。
もしかしたら凪先輩は
" 春 "
自体だったのかもしれない。
俺が恋した人は「春」そのものだった こむぎ/Okome @Okome_komugi
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