散財

「ナイスショット!」

「おい、松尾腕上げたんじゃないのか」

「ああ、ゴルフクラブは新調したし、今は個人レッスンにも通っているんだ」

「早期退職したんだって、それで悠々自適な生活か羨ましい」

「ああ、今までやれなかったことをやってるよ。仕事仕事でレッスンに通う暇も無かったからな」

「奥さんはいいのか休日にほったらかして」

「妻は平日相手しているよ。仕事していないんだから時間はたっぷりあるさ」

「本当に羨ましいよな、俺なんか65歳まで働かなくちゃいけないみたいだ。まだ子供が独立していないからな」

「山辺の所はそうだよな。俺は独立していたから出来たようなもんだ」

ゴルフ仲間と話をしながら、俺は優越感に浸っていた。仲間はまだ働いている。だが俺はもう働かなくて好きなことをしていればいい。お金はたっぷりある。

休日はゴルフ。平日はレッスンを受ける。


妻を高級料亭や、ホテルのレストランなどのディナーに連れて行れていった。妻は美味しい美味しいいとにこにこしている。俺もうれしくなった。


海外旅行は1週間フランスなどヨーロッパツアー。妻は憧れのルーブル美術館に感動し結局美術館で一日つぶした。そしてパリのシャンゼリゼ通りで高級ブランドの本店を見つけ記念にとバックと靴を買った。妻の今までの苦労へのご褒美として。


海外旅行はそれ1回だったが、月に一度は国内旅行に出かけた。日程は2泊3日。テーマパークよりも古くからの名所に興味があった。四季折々の景色を楽しみ、そこのグルメを食べ、温泉に入りゆったりとした時間が流れる。


日々の生活でも、高級食材などもふんだんに使った。生活レベルはぐんぐん上がっていき、いつしかそれが当たり前になった。



そして5年の月日が流れ俺は60歳になった。久しぶりに通帳を記帳した俺は通帳の残高が800万ぐらいしかないことに気づく。どうして、3000万あったはずなのに。通帳を調べてみると月々の生活費の引き出しやカードの引き落としが多額になっている。現金よりもカードで払っていたことが多かったせいで、実際どれだけ生活にかかっていたのか把握が出来ていなかった。年金受給まで後5年。これからどうしたらいいか。

妻に話をすると驚いていた。話し合いをした結果、生活水準を落すしかないことは解ったのだが、これがなかなか難しかった。俺はゴルフの付き合いを止めきれないし、妻にも付き合いがある。


そしてお金が使えなくなったことで妻と衝突することが多くなった。


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