無計画

星之瞳

早期退職

「松尾部長何をご覧になっているんですか?」

「ああ、これだよ」俺は『早期退職者募集』と言うポスターを指さした。

「早期退職ですか?」

「ああ、俺ももうすぐ55歳だし、生活できるのなら早く退職したい。仕事人間でこれまで来たがもうリタイヤしてもいいかと思ってな」

「私たち40代の転職は難しいですね。部長はもし退職したら働かないおつもりで?」

「ああ、そのつもりだ。とにかく人事に行って話を聞いてこよう」

俺はそう言うと人事部に足を運んだ。

人事部の話だと55歳で退職すれば退職金が1千万上乗せされるという事だった。もともともらえる分を合計して3千万を言う事だった。3千万あれば年金受給までの

10年間暮らすのは可能と言う事だった。


「ただいま!」

「お帰りなさい」

明子あきこ食事の後で話がある」

「解ったわ、あなた」

俺は食事を済ませるとリビングのソファーに座った。明子がお茶を持ってくる。

「話ってなぁに」

「早期退職しようと思っているんだ。会社で早期退職者を募集していて、俺は来月55歳になるだろう。退職金の上乗せもあるそうだし、ここらでリタイヤしようかなとおもって」

「あなたがそう思うのならいいですが、年金受給まで暮らせるの?10年もあるのよ」

「そうだな、俺もそれは気になっていたんだが、退職金に上乗せがあって3000万貰えるそうだ。それだけあれば10年は余裕で暮らせるだろう」

「3000万!それ本当ですか!わあ夢みたい」

「仕事仕事でお前を構ってやれなかったからな。息子も独立したし後は夫婦二人で悠々自適に暮らそう」

「本当に夢みたい。私フランスに行ってみたいわ」

「ああ、もちろん」

「解ったわ、後の事はあなたに任せる」

「任せとけ!」


そうして妻の同意も得た俺は55歳で早期退職をすることになった。仕事の引継ぎなど忙しかったがどうにか1月間で引継ぎも終わり。俺は会社を後にした。


後日指定した口座に3000万が振り込まれていた。それを見た俺と妻はこれからの生活が希望に満ちたものに感じた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る