八月十五夜禁中獨直、対月憶元九

第268話

宮中の金や銀の立派な建物に、夜は静かに更けて行く。





私はただ一人で宿直して、君を思いながら翰林院に居る。





十五夜の今夜、出たばかりの月の光。





二千里の遠く、昔ながらの友である君は何を想っているだろうか。





君の居る渚宮の東面、煙る波が冷たげに池の面を覆っていよう。





私の居る浴殿の西辺、鐘が時を告げて深く響いていく。





やはり気にかかる、この清らかな月光を同じには見えないのではないか。





君の居る江陵は低地で湿っぽく、秋は曇りの日が多いそうだから。

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勿忘草~キミヲ オモフ~⑤〔完〕 碧 里実 @from-iland

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