第2話 姫路城は世界遺産
2023.10.09
長男は仕事の関係で一年の半分は地方に長期出張しています。一つの地域で一仕事終えるまでおおよそ2か月ほど滞在し、終わるとつくばに戻ってくるのですが、また1ヵ月ほど経つと、他の地域への出張命令が下ります。もうここ数年こういう仕事を続けています。出張先では、ウィークリーマンションや安いホテルに泊まっていて、給料がそれほど良い訳では無いので、節約生活で、部屋に閉じこもっていることが多いみたいです。
それでも、農作物・食品のバイヤーという仕事の関係上、地元住民とのコミュニケーションは大切なので、話題づくりのためにも、休みの日を利用して、行ける範囲で、地元のおいしいお店や名所に出かけているようです。
ちょうど、9月初旬より兵庫県の明石市が赴任地となり、暮らしていたところ、先日、私に電話があって、「今丁度、姫路城が世界遺産登録30周年記念の特別公開をやっているので、遊びに来ないか」と誘われました。2週間ほど前に崩していた体調もようやく戻ってきましたし、最近は、楽ちん多面のメールのやり取りや講習会の依頼も少なくなってきたので、『そうだ 姫路、行こう』と、新幹線に乗りました。
特別公開は9月24日が最終日だったのでギリギリセーフで、普段は非公開の「東小天守」、「乾小天守」、「イの渡櫓」、「ロの渡櫓」、「ハの渡櫓」、「折廻り櫓」の6棟を全部見ることが出来ました。6棟の同時公開は2009年以来14年ぶりだそうです。
事業費約28億円かかった「平成の大修理」と呼ばれる大天守の改修工事は2009年10月9日から始まり、2015年3月まで約5年半かかったので、今回の公開は改修後初めてということになります。私は小学3年生の時に一度行ったきりで、その時の印象としては白鷺城という割には薄汚れているなと思ったのを覚えています。私はお城マニアではありませんが、今年は春に発掘・復元中の山形城へも参りましたので、人生で初めて、1年に2つの城を巡ることになり、おそらく死ぬまでにはもう訪れないでしょうから、貴重な体験となりました。
さて、今回は姫路城についての話題ですが、また私の右肩にまつわる話で、農村づくりとは関係しないので申し訳ありません。右肩が(骨折の後遺症のため)しっかりと動かせないので、急な階段の続く天守閣では、階段から落ちて事故にならないように、一歩一歩左手で手すりを追いながら登ります。後ろの人に迷惑にならないように、息子が私のすぐ下でフォローをしてくれていましたが、それでも、私が落ちるようなことがあったら、息子を含め数人には大迷惑をかけることになります。よって、絶対に落ちないようにじっくりと登っていきます。なんとか大天守も渡櫓も攻略したのですが、乾小天守の3階へ上るところで、階段の踏面が狭いものだから、足を横にスライドさせたところ、チクっと右足の薬指に何かが刺さったような気がしました。まぁ、それほど痛くは無かったし、後ろが詰まっているし、立ち止まる訳にも行かず、そのまま進み、天守群の中庭を見下ろし、「連立式天守」を堪能してきました。さすが世界遺産です。純白漆喰の城壁や瓦に大感動でありました。
降りてから、足の指を見てみると、黒い小さな棘が刺さっていましたが、感動に痛みをかき消されたのか、気にならなかったので、次の日つくばに帰ってから取ろうと思いました。しかし、新幹線で少しジクジクしだし、つくばに着くころになってかなり痛みがひどくなりました。家に帰って見てみると、薬指は結構腫れていたので、すぐに病院で棘を取り出してもらったところ、幅1mm、長さ3mm程度の薄い木片で、更に化膿もしていたので、消毒し、抗生剤を頂きました。
皮膚科のお医者さんが、「これなんですか」って聞くものだから、「世界文化遺産の破片です」って答えたら、笑いながら「世界遺産を壊したんですか?」って突っ込まれました。
世界文化遺産を損壊したと言われると、ちょっと困る。寧ろ、こちらの足の指を破損させられたと言いたいところです。「罰金があるかも知れないので、取っておきますか?」とおちょくられたが、まぁ、故意に損壊したものでもなく、何しろ微小な木片ですから、損壊とまでは言えないだろうということで、処分してもらいました。
傷の割には大袈裟な包帯を巻いた足を見ながら、「まずかったかな。棘を取っておいて、警察に申し出た方が良かっただろうか」なんて思いながら、ネットで調べてみると、なんと「世界遺産の損壊については、日本の法律上、特別の罰則規定は設けられていない」となっていました。しかし、国宝でもあるので、文化財保護法195条が適用され、重要文化財を損壊・毀棄・隠匿する行為は犯罪に当たり、罰金があるということです。
ひとまず、「ごめんなさい」です。
多くの観光客が毎日のように訪れると、棘が刺さる人もいるだろうし、滑り止めのついた靴下なんかで歩くと、それなりに摩耗も激しいだろうから、観光客はみんな、重要文化財を知らぬうちに小さく損壊していることになるだろう。私もこうして怪我をしたので気になりましたが、そうでなければ、小さな損壊には気づかず、当然のようにサービスを受けるだけの観光客になっていたかもしれません。たった1000円程度の入場券と特別展示も500円。この程度の観覧料でサービスは当然だと思うのは如何なものか。最近は、オーバーツーリズムがどの国でも問題になっています。イタリアのヴェネチアやフィレンツェでも、入場料を取ったり、観覧料を値上げしたり、マナー違反者に罰金を科したりするようになっています。
日本も、国宝にはもっと入場料を取って良いでしょう。子供は教育的観点から無料でも良いが、大人からは今の2倍くらいのお金を徴収しても良いのではないかと思います。また、改修や補修などの特定の目的に対しては、常設のクラウドファンディングがあっても良いのではないかと思います。更に、見所毎に寄付QRコードなどを用意して、各種ポイントやコード決済での寄付ができるようにするのも良いのではないかなぁ。とりあえず罪滅ぼしとして、次に保存促進のプロジェクトでもあれば、必ず寄付させていただきたいと思います。
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