第3話 民主主義は数じゃない
2024.11.11
自民党が政権維持のために、国民民主党に政策毎に協議の協力を求めていることにちょっと疑問があります。私は野党第一党の立憲民主党押しでもなければ、国民民主党が嫌いという訳でもありません。私がどの政党を選択したかの問題ではなく、自民党の政策毎の各党間の協議のあり方そのものに違和感があるのです。
自民党の政策を円滑に進めるためには、政権としてはどうしても過半数が必要だから、その過半数を取るためには、国民民主党の政策を取り入れざるを得ないということですよね。どうしても国民民主党ないし自由民主党が互いに歩み寄れなければ、予算案も法案も通らないので、政策が滞ってしまう。一番手っ取り早いのは、最も自民党寄りの政策を出していて、一番調整のし易い国民民主党の言い分をある程度認めてあげて、なんとか通してしまうことになる。
しかし、よくよく考えてみると、これ都合の良い数合わせをしているだけで、国民の求める方向には沿っていないことにならないでしょうか。なぜなら、立憲民主党は自民党に次いで議席数が多かった訳だから、国民は国民民主党よりも立憲民主党の政策をより多く望んでいる訳だし、野党第二党には維新の会がいるのに、野党第三党で、465議席中28議席しか求められていない国民民主党の方の政策が優遇されることになってしまう。これは変ではないだろうか。
立憲民主党が自民党とは完全に真逆の政策を取っているとは思えないが、例え正反対であったとしても、政権を持っている方が上位となってしまえば、自民党が過半数割れ政権で、ごちゃごちゃと数合わせしながら、政策を実行していくために法案や予算案を通していくことになり、今回148議席と躍進した第二政党となる立憲民主党が国民の3割から支持されたのに、その3割はかなり不利な立場になってしまう。これは立憲民主党にエールを送った国民からすると、なんか解せないように思うのです。「いや、民主主義とはそういうものだ。勝った方が手段は問わず、自分たちの政策を実現して、公約を果たすべきだ」と言われるかもしれないが、それは政治システムであって、民主主義の精神ではないように思います。
アメリカの大統領選というか、共和党と民主党の戦いも同じようなことが言えます。共和党が勝ったら民主党のこれまでは無かったかのように一掃され、共和党一色に塗り替えられる。政策が違うのだから、正反対の政策だからというだけで、これまでの4年の暮らし方が大きく変わってしまうのはおかしい。民主主義は多数決で成り立つのだから、最後はどちらかに偏るのは仕方ないとは思うが、それは議論に議論を重ねた上での、政策の転換か部分連携かであって、初めから数ありきで言うならばそこに民主主義はなく、あるのは「分断」だけではないのか。
日本の政治もその傾向が見え始めているように思えてしかたない。パフォーマンスによる面白さやSNS映えなどのエンターテイメント性だけに引っ張られて、票を投じただけで、政策の議論を尽くすという本来の民主主義の強さが伝わってこない。石破内閣も前岸田内閣も、党内、各党の話をよく聞く、議論をしっかりすると言っていたが、どうも実際に動き始めると結局は政策を通すため数勝負を始めてしまう。本当の意味での議論なんか誰もしていない。言いたいことを言い合っているだけに過ぎない。
国民民主党は石破に総理票を入れず、連合政権には協力せず、政策毎の部分連携だというのだから、自民党は連立政権からはさっさと身を引いて、国民の支持の大きさの順に政策調整を進めていくべきではないのか。それが正反対の政策であってもだ。正反対の政策を調整することは難しい事は分かっている。それをやれば、議論は長引き、決まるものも決まらないということも分かっている。それでも議論を尽くせというのは、きっと政治音痴の青臭い意見なのかもしれない。しかし、都合の良い所だけ票を持っていって、政権の体裁を整えるというやり方はそれ以上に良くない。悪いのは国会での議論の仕方なのだ。議論がバカ過ぎるのだ。互いが自己主張をするだけなら、当然だが、決まるはずがない。だから、野党も只々反対ではだめだし、自民党も只々数の力ではだめで、歩み寄りの政策は何かという議論をして欲しいのです。また、立憲民主党は「してやったり」とにやにやしていたように見えましたが、常任委員会の委員長ポストを以前の2から5に伸ばせたぐらいで満足していてはいけません。大切なのは采配よりも議論の中身ですから。ここも数じゃないんです。
それこそ、AIに政策調整でもやってもらって、デジタル国民参加も含めて、バランスの良いところで、納得のいく選択をしてもらいたい。どっちが勝ちみたいなことをやっていると、終いに戦争になりかねないぞ。
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