第4話 移住後3年目

年末にも関わらず田んぼの地域の住人は嫌がらせをしに来る。12月31日。ちょうど私の母が遊びに来ていて、夕方田んぼを閉めに行った。翌日昼ごろに田んぼに行くとフェンスを縛っているハウスバンドという紐の結び方が変わっている。明らかに違和感がある。そして、ビニールハウスの入り口が紐でぐるぐる巻きにされているのである。私たちが来ないであろう年末を狙って、嫌がらせをしに来たのである。年末だから作業をしないということはなくて、田んぼの地域の住人が嫌がらせをしに来ないか、何か盗まれていないかなど、やることは山ほどにあるのだ。ちょうど夏ごろハウスでナスを栽培していた。出荷先の関係で当日の朝収穫したものを出荷作業を完成させて昼までに持っていかなければなかった。大量にナスを栽培していた私は午前3時半くらいから収穫作業を開始しないと昼までには間に合わなかった。そして、午前3時半ごろ田んぼに行くと不審なシルバーのボロボロの軽自動車が止まっている。新聞配達か、いや違うなと思ったけど、さすがにこの時間帯に田んぼをうろついている人間は不審者としか思えない、というか不審者だった。その日は気にはなったけどさっさと収穫しないと間に合わないので、そんな不審者のことなど構っている暇はなくて作業に集中した。あっ、と思った。明日も同じくらいの時間に来たらボロボロの車は待ち構えているかもしれないと。私の直感は当たった。翌日もやっぱり待ち構えているのだ。なんのためにかわからないが、私が何をしているかがよほど気になっているみたいだ。明日も同じ時間に来たらいるかもしれないと思い、翌日も同じくらいの時間に到着した。あれ、いない。違う。奥の方でライトが光っている。昨日まで見てきたシルバーのボロボロの軽自動車だ。田んぼの奥へ続く道の奥で待ち構え、私が到着するや否や出てきたのである。翌日もさらに翌日もほとんど毎日田んぼ周辺のどこかでハイビームで待ち構えていたのだ。というのは、ハイビームで私に嫌がらせをしたいというのと、監視しないと気が済まない田んぼの住人の考えから来るものだろう。

早朝にはこのシルバーのボロボロの軽自動車が私の監視をしているようだ。というのは、私の家の前をその車が毎日午前5時ごろに通過するためである。他の軽トラの監視者もいるにはいるのだが、早朝に関しては間違いなく同じ人物である。ある日、自宅を出発して反対方向に行ってみた。すると待ち構えていたボロボロの軽自動車が止まっていて走り去ろうとしたので、追いかけてみた。すると駐在所の前で止まり。何ですかと言わんばかりに降りてきて、トランクで探すふりを始めた。何ですかはこっちのセリフだ。毎日毎日私を監視して、何か見つけることはできたのだろうか。私も気になっている、盗まれてもない鉄板は見つかったのであろうか。この田んぼの地域の住人による監視は今現在も続いている。3年も追いかけまわし続けて盗まれてもない鉄板は当然盗まれてないため出てこず、新たな嫌がらせとして私が田んぼに来て作業を始めると雑草を燃やし始めるのである。すると、嫌な臭いが発生して呼吸がしずらくなるということまで見越しての嫌がらせである。次から次へと田んぼの地域の住人による監視、嫌がらせはどんどんエスカレートしていく。

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