第2話 移住後1年目

さて、自宅も購入し、農地も借り受けることができ、いざ移住。農業をするのには水が必要になるため、田んぼの地域の住人を集めてもらい役所が私らを紹介してくれた。で、肝心の川の水を使わせてほしいとの旨を伝えると、川の水枯れあがるほど使うんやったらそんなもん認められへんぞと、強い口調でまくしたてに来た。何回説明しても理解力がないからなのか、承認されることは無く、現在も川の水を使用することは許されていない。私らは川に細い配管を突っ込んで少量使用するだけという何も難しくないことを説明しているのに、理解ができないようだ。そもそも川の水を枯れあがらせるなんて無理に決まってるだろと、のどまで来ていたのだが、ぐっと堪えたのを覚えている。荷物をトラックで運び引っ越しも完了した。私らが自宅に到着し荷物を降ろしていると自治会長とかいう住人が来て、とりあえず挨拶を交わした。話し方が汚くて何とも威圧感のある話し方をするんだなと思った。まずは、荒廃しきった田んぼの草刈りから取り掛かることとなる。1週間ほどかけて荒廃しきった田んぼの草刈りも終え、一応地表面部分はきれいな状態へと変貌を遂げた。私らが作業をしていると隣の田んぼを管理している住人が、何作るんやと話しかけてきた。この住人が後にトラブルを引き起こしてくることになるとは。私が田んぼに到着すると必ず駐在所のパトカーが徘徊しに来たのを記憶している。私らが借り受けた田んぼを奥に進めば1kmほどで行き止まりだし、こんな田舎に事件など起こるのかという不審な感じがした。必ず徘徊しに来るわけでもないし、1年目に関しては特にそれが気になるなんてことはなかった。早朝6時頃に地主のガキと、借りている田んぼの近くをまとめて借り上げることになった農業法人の代表者が来て、私に聞こえるように三流農家がアホみたいなことやってらとげらげら笑い始めた。もちろん、対象は私しかいなくて、他に作業をしている人間などいない。ビニールハウスの建設も完了し、きゅうりの栽培も順調に進み大したこともない1年目は過ぎ去っていったのである。

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