12/24 10:00
レオたちが住む雪国から、遠く、遠く離れた街のこと。市街地を抜けたあたりに広がる森、そこには小さな孤児院が佇んでいた。外国人が設立した教会と連携した、キリスト教系の孤児院だ。
白い雪が降っているのにも関わらず、中庭では多くの子供たちが走り回っている。白い息を吐きながら雪を固め、何人かで大きな作品を作ろうとしているようだ。
しかし、ひとりその輪には入らず、部屋の中でクリスマスツリーを見つめる女の子がいた。十にも満たない年齢、肩までのさらさらな茶髪。その少女の名はノアと言った。
するとノアの横に、一人の男の子が駆け寄ってきた。その子はノアの背中に勢いよく飛びつき、彼女の驚いた顔を見てにやりと笑った。
「アルネ、やめて」
アルネは、ノアの持っていたクリスマスの飾りを奪い取った。可愛らしい表情の雪だるまが、男の子の手によって引きちぎられそうになる。
「返して」
「やだねー」
取られたモーメントはそのままに、ノアは目の前のクリスマスツリーを見つめた。
「もう、明日がクリスマスだね」
ノアは穏やかな口調で、悪戯をやめないアルネに向かって言った。
「礼拝、すごく楽しみ」
今日はクリスマスイブ当日。今日の夜と明日の昼、教会ではクリスマス礼拝が行われるのだ。それを、ノアは一年間心待ちにしていた。
「は、なにがクリスマスだよ、苦しみますだろ」
アルネはそう言って走り去っていった。開けっぱなしの窓から、冷たい空気が流れ込んでくる。なにいってるの、とノアは小さく呟いた。
隣の教会では、牧師さんや先生の手によってクリスマス礼拝の準備が着々と進められていた。白い粉雪は、しんしんと降り積もっていくばかりだ。
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