星はさやかにきらめいて

夜賀千速

12/23 20:00




 さやかに、星はきらめき。

 御子イェス生まれ給う。




 プレゼント工場に隣接した教会から、優しいピアノの音色が聞こえてくる。流れるメロディを奏でるのは、ここの工場長だ。


 その音色を、一人部屋で聞いているサンタクロースがいた。赤い服を着た、背の高い彼の名はレオと言った。レオは小さな木箱を開け、飴を取り出して宙に投げた。キャッチしたそれを、勢いよく口に放り込む。壁にかかったアドヴェントカレンダー、その引き出しはあと1つ。明日はとうとう12月24日、一年に一度の聖なる夜。雪の街をいくつも越え、彼は贈り物を届けに回るのだ。


 ふと廊下から、部屋に近づいてくる足音が聞こえてきた。まもなくノックの音がし、一人の男の人が入ってくる。彼の名前はハールート、今まで多くの経験を積んできたベテランサンタクロースだ。ハールートは、見習いサンタであるレオの指導をしていた。

「レオ、いよいよ明日だね」

 含んだ笑いを見せたその人は目尻を下げ、ゆっくりと瞬きをした。

「わかっているとは思うけど、少しだけ約束を確認しに、ね」

 はい、とレオは姿勢を正した。その目の奥には、静かな希望が見える。

「見習い期間は今日で終わりかな。もう、そのバッジも卒業だね」

 レオの胸には、星のバッジが光っていた。それは見習いサンタが修行期間につける、一年限りの特別なものだ。

「はい!絶対に合格してみせます」

 本物のサンタになるには、一年間修行を行なった上で、試験に合格することが必要なのだ。サンタになるための道のりは険しい。

「今まで頑張ってきたんで、絶対に大丈夫ですよ」

 ハールートは満足げに、深く頷いた。

「そうだね。それを、存分に発揮してくるんだよ。子供たちに笑顔を届けること、それが約束だ」



 サンタクロースの一年は忙しい。仕事をするのはクリスマスの夜だけで、それ以外は暇をしている、なんてことはないのだ。山ほど送られてくる手紙を読み、どんな子供かリサーチをして、運ぶルートの確認をする。それが済んだら、材料の発注と工場での生産。大きい荷物を運ぶため、トレーニングも欠かさない。


 サンタになるためには、筆記試験と体力試験、実技試験に合格することが必要だ。明日の実技試験に合格すれば、レオは晴れて一人前のサンタになることができる。


「あぁ、あと」

「絶対に、子供たちには見つからないこと。いいね?」

 丁寧に手入れされた白髭をさわさわと撫で、ハールートは告げた。当たり前じゃないですか、とレオが答える。

「出発前に、ちゃんと確認もしておくんだよ。届けるプレゼントは揃っているか、添える手紙は間違っていないか」

「はい!」

 任せてください、と何度目かもわからない言葉を告げるレオ。ハールートは満面の笑みを浮かべた。

「じゃあ、頑張ってね」



 レオは緊張していたが、それと同じくらい楽しみでもあった。子供たちに笑顔を届けられる喜びが、レオの中に満ち満ちていた。




 いざ聞け、御使い歌う。

 たえなる、あまつ御歌を。




 ピアノだけだった讃美歌に合唱が合わさり、大きな音となって部屋に届く。壁をいくつも越えて奏でられる音色は壮大で、あまりに美しい。レオは歌詞を口ずさみ、明日への期待に胸を膨らませた。

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