第4話 いつだって カップケーキ


 ナンパ男たちが去ってから数分後、息を切らしたみーくんも待ち合わせ場所に現れた。


「寒い中待たせてごめん」

「そんな待ってないよ。それじゃ行こうよ」


 私とみーくんは歩き出す。


「あの時の服だよね。可愛い。似合ってる」

「覚えててくれたんだ。うん、私も気に入ってるんだ」

「うん、ボクも好き。あ。それでね、すごいビッグニュース。年内中にスマホ買って貰えることになったんだ」

「おお、それは嬉しいニュースだ」

「これで普段からフーカと話せるようになれる」


 と、二人で手をつなぎながら、無言でニコニコして微笑み合う。

 いっぱいみーくんと話すのも好きだけど、このなんか通じてる感じがする無言の時間も好き。


「そういえば、クリスマスプレゼントとは別にカップケーキ焼いてきたんだ。持って帰る? 一緒に食べる?」

「できれば一緒に食べたいな。寒いけどベンチとかでいい?」

「うん。ホントはそう言うと思って、水筒に熱い紅茶用意してきたんだ」


 と、できる女アピールをさり気にしてみる。


「ホント? 嬉しい」


 と、みーくんも喜んでくれた。


「そういえば、知ってた? お菓子の中に、意味を持ったものがあるんだって」

「……へぇ、そうなんだ」


 みーくんが、バツが悪そうにそっぽを向く。


「カップケーキは、『あなたは特別な人』。マドレーヌは、『あなたとさらに仲よくなりたい』」


 そもそもなんで私の誕生日プレゼントがマドレーヌなのかなって疑問に思ったんだ。それで調べてみたら、そういう意味があったんだ。


「さて問題。キャンディってどういう意味だと思う?」


 ちょっと意地悪だけどこういうのも好きかも。赤い耳をしたみーくんは不貞腐れ気味に答えた。


「『あなたが好き』、だった、ような」

「うん、正解」

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