固執
「お母さんみたいになってはいけない」
そう言われて育ってきた。
母は私が物心つく前に自殺をしてこの世に私と父を置いていったから、親戚から非難され続けている。
私は母みたいになりたい。
いや、もっと言うなら母になりたい。
未知へ手を伸ばすなんて、誰をも汚さず自分だけを殺してしまうなんて!
あまりにも素敵だ。彼女と生涯を過ごせずとも、彼女の元に産まれたのが幸せなくらい。
きっと私は母に、死に憧れている。
言葉として描写できないような思いを積み重ねた結果だろう。
この感情が間違いだとしたら、間違いだと証明されてしまったら、迷わず死に飛び込む。
そう在りたい。
「今は何考えてるの」
「あっ…舞衣、ごめん。」
「別にいいけど」
またやってしまった。舞衣と居るときは考え事なんてしないようにしていたというのに。
彼は俗に言うメンヘラかもしれない。私と同じだ。そこが好きだ。
言っておくが、あくまで私達は恋人ではない。友達以上恋人未満とは私達のために作られたワードなのではないか?
舞衣と部活で行う打ち上げの買い出しに2人で出かけている途中だったことにようやく気が付いた。
どうやら今は駅のホーム、軽く腰掛けれるベンチらしい。
「…疲れた。」
そんなことを言って舞衣はナチュラルに私の肩へ寄りかかる。
公共の場なんて忘れてしまう程の急な行動にはきっと、私の心臓も高まっているはずだ。
でも、彼の包容力にはいつも負けてしまう。
中学生の時に初めて出会ったとは思えない程、彼には限りない信頼感を覚えているから。
きっと全てを受け入れ、許してくれるんだ。
私が死にたいと言っても…きっときっと、
ふと横を見ると美しい横顔がそこに在る。
私は間違いを犯したいと思っているんだよ、君が思う程綺麗な人間じゃないんだよ。
受け止めて欲しい。
「死にたい、な」
「えっ?」
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