12 重愛、故に別離。



 

「なんで最近、連絡返さなかったかって言うと……前々から少し言ってはいたけどさ、ついに親父が亡くなってさ…………でもね?でも、

実は俺全然平気なんだ。強がってる訳でもなくね。なんでだと思う???」




 君は、なんで返せば良いのか。それこそ強がってるようにも見えるであろう僕が、この

クイズ形式での話を展開し出したことに、

ひどく困っているように映っていた。

当時の僕は、一刻も早く

「大したことではない」

と、言いたかったから、君の様子なんて気づく間もなかった。


 

「そう、実はね…………父親の浮気が発覚しました〜!!(笑)
いや〜びっくりだよ。まさか本当にあるんだって感じだったよ。こんなドラマとかで見る展開をさ、まさか、自分が実体験するなんてって感じだったよ……

感想としては、そうだなドラマみたいなリアクションなんてできなくて、ただ唖然とするだけだったな。さっきまでお父さんを弔っていたけどその写真も伏せてさ、遺骨も共同墓地に放り込んでさ、いや〜いい気味だよ。本当いい気味。イェーイ、って感じ?(イェーイと遺影をかけている)

家族でもこんなことあるんだ〜ってなった……」



 

君は、終始、黙って聞いてくれた。まるで僕に溜まっている感情を吐き出させてくれるかのように、ずっとずっと黙って聞いてくれた。


「僕って浮気するやつの子供なんだ。印象変わっちゃったりしちゃうかな?僕は絶対そんなことしないから安心してね。」


「それはもちろんです。この話を聞いたからって印象が、変わったりしません。」


「良かった…!だからさ、話変わるけど、これからもずっと一緒にいてね。僕はもう今あまり人を信用できなくなってるんだ。だから、君だけが頼りなんだ。頼む。
どうか、一緒にいてね。」




「私のことは?」


「え?」


「私のことも信用できなくなってる?」


「いや、そんなことは……」


怖い。ものすごく。




「一緒にいてねって言われなくても一緒にいるつもりだよ」


「…………ありがとう」



「だからそんなこと言わないで」


「うん」




噛み締める。




「ありがとう、うん。うんうん。」




 僕は君に甘え、くっつき、手を繋ぎハグをした。この時ほど純愛というものを信じたことはない。僕は今、君に寄りかかっている。まるで僕のこの気持ちを君にも持ってもらうように。

僕は君を。君のことを。君だけを信用することを決めた。

そんな矢先、君からの連絡が少しずつ、

ほんの少しずつだけど、


遠くなった。

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