9.1回目の挑戦。

 ついに、テレビで放送された。


『猿はベートーヴェンを超えられるか。』

猿に演奏をさせている。猿の前にピアノを置いた。猿は意味も分からず、ドレミを奏で始めた。めちゃくちゃな不協和音が鳴り響くばかり。やはり、猿に演奏なんて出来ないのだ。それがなんだか、当時の僕はとてつもなく嬉しかった。出来ないやつはやっぱり出来ないのだと、ダメなやつはダメで、確率で見れば0ではないにしても、限りなく0に近いものなんて実現するわけないと。そりゃそうだ。出来るわけないんだ、僕にも出来ないのに出来るわけがないんだ。僕に出来ないことが出来てたまるかって思った。良かった。安心した。出来るということが証明されなかったから良かった。


 しかし、1小節。少しだけ音楽っぽい部分があった。なにか演奏のように聞こえる部分があった。それだけでテレビでは大騒ぎ。スタジオでは、芸能人たちが、これはいつしかベートーヴェンを演奏する日もあるかもしれない!?なんてことを言ってた。






「馬鹿馬鹿しい」。

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