8.範疇の中。



今日も演奏をする。猿と並んで。



 猿は押すだけで音が鳴るキーボード。僕はバスアコーディオンを持っている。猿が軽快な演奏を継続するのに対し、僕は低い音を重苦しく奏でる。先生は、それを聞いて評価を下す。




「うん、キーボードの演奏は実に聞きやすいね。
みんなもよく聞くように」


 

いつのまにか背後には、クラスメートがいる。みんな、耳を澄まし僕たちの演奏を聞いている。僕も負けじと、重たい低い音を奏で続ける。




 「うんうん、キーボードの演奏は、ポップでノリノリになるね。聞いててなんだか幸せになるよね。いいね。」




 クラスメートも同意を示しているように感じる。僕もさらに負けじとさらに重たくもっと低い音を、根性で奏で続ける。


 

「はい、終了〜。演奏お疲れ様でした。


えーと、バスアコーディオン以外の演奏はとても良かったので、これからも頑張ってね。バスアコーディオンはもうちょっと頑張ろうか。じゃ、お疲れ様でした。」


 

背後にはソプラノアコーディオンや、トライアングル、果てはシンバルといった楽器をいつのまにか持ったクラスメートたちが満足げな様子で談笑を続けている。1人で片付けをして、この空間から出ようとする。ドアを開けた時、みんなからの視線を感じた。振り返ると、指を指している。




「この空間で1番いらない人、だ〜れだ?」




これは、悪い夢だ。

アーー。


アアアアアアアアー!空間への不協和音。




________________汗水。




汗びっしょりで目を覚ます。
これは、「光と音楽」を完成させた翌日の話である。
たぶんあの日、隣人に怒られたから。その影響。その影響と、あれは、昔の、中学の頃の記憶などが混同して見た夢。

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