7.良く、浴、浴、欲。



 僕の家にはVRなんて代物はない。一度、安っぽい恐らく偽物のゴーグルを買ってみたことがあるが、視界と音の感触?が合わず、僕がVRに向いていないのだと思った。

 そして何よりも、VR、つまりバーチャルだと嫌というほど認識してしまう。僕はそこまでバカになれないから、VRだと認識し続けることが虚無をより加速させてしまうことに気づいた。買って届いた日の午後にはすでにゴミ箱に入れてしまった。

 僕にとってのベストな解放は良く食べ、長い時間、浴槽に入り、性欲を処理出来れば、並大抵のことは忘れ去り気分が落ち着くということがわかった。



 この場合の「良く食べる」は、健康的なものを食べるということではなく、先に述べたマックのようなファストフード、もしくはコンビニ弁当やカップ麺など、手間をほぼかけずに食べられるもののことを指す。お風呂を沸かしながらご飯を食べる。お風呂が沸いたらダラダラと1時間くらいかけてゆっくり入る。のぼせる1歩手前くらいまで浸かってしまう。なぜかというと一度入ると出るのが億劫になるからだ。テレビの音が遠くから聞こえる。沈黙が怖いから何をする時もテレビをつけっぱなしでなにかする。例えテレビを見ていても見ていなくても。リビングに戻り、ストーブの前。寒いけどまだ身体に水滴が付いているから服を着たくない。ぼーっとして、寒気がして、やっと服を着る。そんな具合。毎日が繰り返し繰り返し続いている。終わりたくもないけど身体は確実に、少なくとも昨日よりは老いている。なんだかそれが怖い。少しずつ生きていた過去が増えていく。安全だった過去が終わり、何が起こるか分からない今以降の時間を迎える。人間は、過去を過ごすことはできないから今以降しか過ごせない。無駄にしてしまうと不安になるし、何かしていてももし選ばなかった行動をしていたらどうなっていたのかというたらればばかりを考える。こんな時にも、凄い人はなにか世のため人のため、自分のため(生産性のあること)のことをしているのだろう。自分の欲を処理するためだけというなんという自己中心的で生産性のないことをしているのだろう。今日もそんなことを考えながら眠気がやって来て、それに抗うことが出来ず、今日も寝落ちする。欲にまみれた一日。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る