6.光と音楽



(これは、以前ぼくが書いた、あの頃の精神がモヤモヤしていた頃の小説である。その時は君と交際関係にあり、上手く行っていたのにも関わらず、僕は「終わり」とか「お別れ」とかをずっと考えていた。その当時のありのままの文章を記したいが、流石に今のぼくはあの頃よりも小説を書くのが上手になったので本当に書きたかったことを再考しながら書きたいと思う。なので、これはリメイク作品である。僕はリメイクする理由をあの頃の文章をより的確に伝えることができるようになったと思うから……の他に、今の僕なら何かしらの賞を受賞しても良いのではないかという欲があるから、リメイクを行う。かくして、今回もそれと同じように行う。なお、印として、タイトルの前に「Re:」を記す。)




________________穴。




小説。Re:光と音楽。

 


 日々に嫌気が差して僕はここに来る。
目を開けると、明るい空間。木々は生い茂り、花は咲き誇る。見たことがない外国風の街並み。音が漏れ出てくるコンサート会場。僕が好きなものしかない世界。自分の好きなように世界が作れる場所。
きれいな光、きれいな音楽。
現実のどこにも転がっていない景色。現実のどこを探しても見つかることはない景色。
ここには「無駄」がない。いっぱいの余白がある。何を置いても何をしても、誰といても良い。そんな余白。
 対する現実。どこに行っても隙間風を感じ、何をしても焦燥し、誰といても自分がここにいて良いと思えない。そんな無駄。話を合わせないと自分が「無駄」になる。無駄な存在は、話が合わなかったら消される。いなくなる。そんなのすごくめんどくさい…………




 コンサート会場から人が出入りし、流れていた音楽が鮮明に聞こえた。あれは、「歓喜の歌」。日本で言えば年末や、アニメエヴァンゲリオンで使われていたりする楽曲である。僕が、いわゆるクラシック音楽で1番好きな楽曲だ。耳を澄ませて聞いているうちに僕は無意識にそちらの方に歩いていた。

 ドアを開けると、耳いっぱいに歓喜の歌が広がり、僕の心を満たす。照明が演奏者を照らし、空間がより一層明るくなる。もう何も邪魔するものなんてない。演奏者と観客のボルテージが上がっていくように感じる。相乗効果でどんどん上がり、空間が上がる。照明がより一層明るくなる。音楽も大きくなる。私のテンションも上がる。上がって上がって、天井も飛び越え、どこまでも!!!!

ついに1番盛り上がる!!!!!!


その時!!!!!!!





…………………………ピンポーン。

 


「はい?」


「あの、隣の者なんですけどうるさいんですけど」


「はい」


「ここ、住宅街というか、マンションなんで…」
「はい」


「気をつけてくださいね」


「はい、すみませんでした」


 

1人で上がってただけのテンションは、VRというバーチャルなもので、現実は何も変わっていなかった。気づけば夜の21時になっていた。ゴールデンタイムも終わりの方。翌日を考え始める時間。

「寝るか」と、独り言を言って僕は床に入る。
くだらない現実を生きるために。





おしまい。





 あとがき



 

 最近は、現実の無駄についてずっと考えている。本当ならば(例としてみんなにやる気があれば)やらなくて良いことを誰かのためにやることが正義というか善というか正しいこととなっている。それらは前提から破綻しているのにも関わらず、本来ならばもっと活躍したり、人生において良いことを成し遂げるはずの人が、くだらない個人の感情、他人の気分というもののせいで、ありきたりな1人の人間として成り立ってしまう現象。こんなことが続いていると、頑張ること、やる気を出すことがバカらしくなってくる。やる気があるなら私の分もやってーみたいな人ばかり。僕も関係性を大事にするからやらないという選択肢を選べない。よって前に進めず、均質化、平均化され、大したことない人間という評価になる。ふざけるなと思うけど、見ている人は見てくれていたりする。正当な評価(この場合は、他人を助けていることについて)を受けると嬉しい。そう思うと、僕も結局、気分で動いてるということがよくわかる。気分屋は嫌いだが、所詮、気分が良くないとやる気とか頑張るっていう気持ちは出ないのだ、と改めて思い知らされた。




読んでいただきありがとうございました。


皆様に感謝致します。

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