第4話 終わりの後の始まり(3)
何事も突然には起こらない。家族を失う者、離婚する者、刑務所に行く者、愛情なく一人になる者は、「突然これが起きた」とは言えない。
私たちは皆、異なる痛みの閾値を持っている。単純な胃の感染症だけで、食習慣を変え、運動をし、より健康的な生活を送る必要があることに気づく人もいる。小さな刺激だけで、考えを改め変化する...
一方で、穏やかな警告に耳を貸さず、重度の肝硬変や狭心症で死の淵に立たされてはじめて「くそっ、今こそ自分の健康に気を付けなければ...」と言う人もいる。それは、その人がどういう人間か...どう反応するか...という問題だ。私たちは常に、痛みの閾値に達するまで段階的な警告を受けている。
良心の声や一冊の本を読むだけで反応する人もいれば、すべてを無視し、どん底に落ちてはじめて何かをしなければならないと気づく人もいる。私は小さな刺激では動かないタイプだった。より大きな警告を待つタイプだった。日々が過ぎ去り、痛みは減ることはなかった。
翌朝目覚めると、寝室は光で満ちていた。爆発寸前の機械のようにベッドから起き上がった。今日が、その日だった。今日、あの男が裁判にかけられ、刑務所に送られる日だった。
時計を見る:11時50分。あの男は13時に裁判所の前にいるだろう。無駄にする時間はなかった。今日こそ、すべてが終わる日だった。私はピストルを取り、ズボンの後ろに差し込んだ。家の扉はまだ開いていた。
アレッシアと共に建てたこの家を最後に見つめた。かつては多くの喜び、希望、夢に満ちていたこの家...今では失ったものの絶え間ない思い出でしかなかった。
—これはお前のためだ、アレッシア —と、私は勇気を振り絞ってつぶやいた。
外に出ると、日の光が私の目を容赦なく焼いた。車に乗り込み、エンジンをかけた。数分後、裁判所建物から数歩のところに古いトラックを停めた。
車を降りる前に、裁判所周辺の喧騒を暫し観察した。通行人や野次馬が数人のジャーナリストと混ざり合っているのが見えた。ある母親がピンク色のベビーカーを気楽に押して歩いており、車の開いた窓から小さな赤ちゃんの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。その音は刃物のように私の心を突き刺した。
車から降り、ピストルはズボンの後ろにしっかりと隠されていた。熱い空気はガソリン、ほこり、アスファルトの匂いで満ちていた。私は少し足を引きずりながら、建物に向かって歩みを進めた。目立たないよう適度な距離を保ち、ついにすべてが終わる時を辛抱強く待った。
12時54分、あと数分だ。額から滴る汗を拭い、脇の下のべたつく湿り気を感じた。若いジャーナリストが私を興味深そうに観察しているのに気付き、一瞬発見されるのではないかと恐れた。突然、建物の前に集まった小さな群衆の囁きが大きくなるのが聞こえた。デモ参加者がプラカードを振り、スローガンを一斉に叫んでいるのが見えた。
遠くに、奴が見えた。私からすべてを奪ったあの野郎が、二人の警官に付き添われて裁判所から出てくるところだった。二人の警官の腰に下がった銃の柄が光るのが見えた。引き返すにはもう遅すぎた。あの野郎が私の生きる理由を奪いに来た夜も、アルコールの臭い息だけを残して去った夜も、すでに遅すぎたのだ。
その時が来た、階段の中央に向かって歩みを進めた。誰も私に注意を払わない。小さな群衆の監視は今や、暗い表情で階段を降りてくる被告人に集中していた。私は彼の太った疲れた顔を注意深く観察した。男は私に目を向け、好奇心を持って見つめた。私から数メートルの距離に来たとき、私を認識した瞬間に恐怖が彼の目に浮かぶのが見えた。
汗ばんだ手をシャツの下に入れ、熱くなったピストルの握りを掴んだ。素早い動きでリボルバーを取り出し、アレッシアの殺人者に向けて構えた。
輝く銃身を見て驚き恐れる彼の顔が見えた。不器用な発砲で彼の膝に命中した。警官たちはすでに銃に手をかけ、発砲の準備をしていた。
恐怖の叫び声がコンクリートの海岸に打ち付ける波のように群衆を貫いた。時間を無駄にせず、二発目の弾丸が野郎の頭を打ち抜いた。血しぶきが彼の頭蓋骨の後ろから噴き出し、彼は即座に鉛の塊のように地面に崩れ落ちた。まさにその瞬間、私は胸に灼熱の衝撃を感じた。弾丸が私を貫き、私は固いコンクリートの上に仰向けに倒れた。
血が胸から豊富に流れ出ていた。群衆の叫び声と騒動は徐々に穏やかな静けさへと消えていった。闇が母親の抱擁のように優しく私を包み込んだ。
震える口から血の塊が流れ出る中、最後の息を吐き出した。
—許してくれ...アレッシア —命が私から抜け出ていく中で考えた。
幻覚の連続のように、アレッシアの優しく美しい笑い声が聞こえた。浴槽で笑いながら私に水をかけている彼女の姿がはっきりと見えた。彼女の笑い声の反響が遠くで響き、哀愁を帯びた交響曲の最後の音のように私の内臓を揺さぶった。
時が止まり、私の人生の映画は不動の永遠の動く映像となった。私の目の前で、アイボリーの美しいドレスを着て微笑むアレッシアが見えた。光に包まれた会場で、大勢の前で私は彼女の指に指輪をはめた。
次に、彼女が柔らかな光に包まれて、小さな森を歩きながら私に優しい眼差しを向けているのが見えた。その次の瞬間、彼女は震える手に陽性の妊娠検査薬を持ち、美しい顔に涙を流しながら私の前に立っていた。
今度は、アレッシアが横たわり、私が彼女のお腹を撫でながら、まだ生まれていない私たちの赤ちゃんに子守唄を歌っているところだった。まるで私の人生全体が架空の映画に記録されているかのように、私はその壮大な最終上映に茫然と立ち会った。
私は喜びの瞬間、悲しみ、過ち、そして幸福の強烈で素晴らしい瞬間を再び体験したが、私たちの日常生活を満たしていた小さな優しいことも同様だった。
突然、私の体が熱湯から立ち上る蒸気のように、優しく浮き上がるのを感じた。大きな血だまりに囲まれ、地面に倒れている私の体が見えた。
小さな唸り声が聞こえ、空気中に円形の波が形成されるのが見えた。波は徐々に一点に集まり、瞬時に青い断片へと変化した。
その断片は恋人のキスのように、優しく私の額に落ちた。やがて、その断片はまるで水中に沈むかのように、ゆっくりと沈んでいった。そして、私は壁が微風に揺らめくような巨大なトンネルの前に立っていた。
私は熱に浮かされた川に浮かぶ一枚の葉のように、抗いがたい流れに引き込まれ、千の太陽よりも白い、強烈な白い光が慈悲深く私に近づいてきた。
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