第3話 ついに届いたiMac!

 きたぁ! ついに届きましたiMac! なっちゃんに泣いて土下座してお願いして3ヵ月、やっとのことで買っていただきました。


 仕事から帰ってくると、玄関にあるのはiMacの箱。私の自宅はメゾネットタイプなので、1階には階段と奥に押し入れ、そして2階がリビングに続いています。私は2階にいるなっちゃんに大声で話しかけました。


「ついに届いたんだ! ありがとう買ってくれて」

「……おぉん」

 おぉん? 機嫌悪い? もしかして、つわりか何かか!? 私は急いで階段を駆け上がりました。


「どうした! なにかあった?」

「いや、思った以上に大きかったけんなiMacが、びっくりしたんよ。こんなでけぇんかって」

 あぁ、びっくりしてただけか。余韻長すぎん? 届いてから結構時間たってるでしょ。そんなところも愛おしい。


 2人で食事を済ませて、私はiMacの初期設定を開始、これに中々時間がかかるんです。言語の設定や、パスワード、iPhoneとの連携などなど、それに必要なアプリをダウンロードすると、それだけで3時間以上を費やしました。20時にはスーパーマーケットに行って割引のステーキ肉を買わないといけないのです。なぜって? 今年のクリスマスのメイン料理ですから。


 初期設定が終わるまで少し、時間がある……。今ならスーパーにいけるかもしれないと思い、なっちゃんを連れて、向かいました。到着するやいなや、カートとカゴを準備して、いざ戦場へ! 狙うはアンガス牛のサーロインステーキ200gで800円の割引です。2つあるといいのですが……。


「う~ん、もうないね」

 目当てのステーキはありませんでした。せっかく時間を調整してきたのに、手に入れることができないとは、無念です。私がカートを押して、お肉コーナーを通り過ぎようとしたとき、なっちゃんが引き留めました。


「殿、もう少し待つのじゃ」

 殿? ん? ここが戦場だからか? おぉん、これは乗っかった方が良さげな雰囲気。


「何? それはどういうことだ」

 意外とノリノリで相槌をする私、すると、バックヤードから何やらシールを持った店員さんが現れました。


「こ、これは!?」

「そう、あれは割引シール、殿はシールが張られた瞬間、すぐさま手を伸ばし、ステーキを2つ手に入れるのです」

 まだ続けてる……。その眼は真剣そのもの、そんあ真剣に誰の物まねしてんだろう? とは思いつつも、指示に従い、ステーキの前へ。


 じっとシールが張られるのを伺いながら、他のお肉を見てますよ感を演出。この時の私は無そのものです。恥や外聞は一切気にしません。まるでそこに昔からいたであろう、『物』になり切ることが重要。店員がシールを張るのを知った他の人もお肉コーナーに群がってくる。これは……負けるわけにはいかない。私はチラッとなっちゃんに視線を向けた。なんと、携帯をいじってる!? 私がこんな危険な目に遭ってるのに、携帯をいじるだと? 殿の前でか!


「ダメだ、目を離すととられる……」

 ここのスーパーのステーキは質が良く、割引が張られるとすぐにとられるんです。何としても取らないと! そして、いよいよステーキにシールが貼られていきます。最初は国産牛、リブロース、ミスジステーキ、まだ、まだだ! 心臓の鼓動が脈打ってるのを感じる、ステーキを手にするだけなのに、こんなに緊張することありますか?


 ついにアンガス牛のステーキにシールが張られるその瞬間、私と同じように手を伸ばす者が……! そんなわけにはいかない、シールが張られると同じタイミングでステーキを取り上げ、次のシールが張られそうになったのも同時に手にしました。すまんな、これが戦場だ。私は同じように手を伸ばした者と目をばっちり合わせてしまい、なぜかドヤ顔してなっちゃんの元へ。


「見て、手に入れたよ」

「さっきのおばちゃん凄い殺気だったよ。あれ1人殺ってるで、アンタ2人目かもな」

 おい、縁起でもないこと言わないでよ。その後も店の中をうろついていると、おばちゃんと何度も鉢合わせ、その度に凄い目で見られます。だが、こちらも事情があるんでしらこい顔でなんとかやり過ごします。お目当てのステーキは手に入れたし、後は帰るだけ、家に帰ると初期設定が終わったiMacの画面が真っ黒に。


「おっ、終わったかな?」

 電源を押すと、パスワード画面になったのですが……。


「あれ、これでもない、ん? これじゃない」

 なんとパスワードを忘れてしまい、その後2時間ほどiMacは使えなかったです。あぁ……おばちゃんの怨念かな?

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これから、パパになる準備をします! Mr.Six @0710nari

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