第2話
俺はモヤモヤしながらも、また本屋に向かっていた。さっき買いたい本があって、手に取ろうとした時に上城さんに話しかけられたのだ。本当に変なお姉さんだった。うん...。また会いたいとは...思わないかもしれない。
俺は悩みながらも、欲しかった本を手に取りレジに持っていく。
「商品お預かり致しますね...あら、なーくんじゃん。どったの小説なんか買って? 普段ゲームしかしてないのに」
....!? 突然の本日なーくん2回目。しかし、その声と顔には馴染みがありすぎた。
「淑乃じゃないか。え、お前ここでバイトしてたの? レジ来るまで分からなかったわ...」
「ひど。はぁ〜、それでも幼馴染なんでしょ? あたしぐらい半径100m以内で気づきなさいよ。」
「いや100mは分からんだろうが。てかここで働いてるって言ってなかったじゃん」
「えーなんでわざわざあんたに言わないといけないの? 幼馴染だからってなんでも共有するわけないっしょ」
まあそうなんだが...。こいつは鳴瀬淑乃(なるせ よの)。俺と正真正銘の幼馴染である。特徴といえば、いつものカールのかかったツインテールなんだが、仕事中なので1本で髪をまとめている。
「この本最近人気の奴じゃん。タイムリープ系?だっけ。この系統最近増えたよねー」
彼女は話しながらも、手際よくポイントカードを読み取り、本にカバーを付けている。
「たまたま俺の好きな作家さんなんだよ。普段は小説なんて一切読まないね。読んでも漫画かな」
「はいはい知ってますよー。お支払いはどうなさいますか?」
「現金で」
今頃のバーコード決済やらスマホ決済やらをしてない俺は、歴戦の現金主義者であった。その内乗り換えたいんだが...まあ淑乃にでも後で詳しく聞くか。
「レシートはご利用なさいますか?」
「大丈夫です...バイト頑張れよ」
その後の淑乃は接客モードに戻り、俺に少し手を振る素振りを見せながらすぐ後ろのお客の対応をしていた。
「あいつも頑張ってるなー」と内心思いながら、店を出ては、そこら辺をある程度ぶらついてゲーセンに吸い込まれるように行った。良さそうな台を眺めながら歩いたが、どれも俺が欲しいようなものもなかったので、そのまま出口へと向かった。
上城さん、もう帰ったよな。そんなことを思っていると、何やらミニクレンゲームに張り付いている女性がいる。めっちゃ見覚えあるんすけど。帰ったんじゃなかったのかい。
「うう...このくまっまちゃんのバブみエグすぎぃ...はぁ可愛い。一緒に帰ろうね? うんうん」
よし帰るか。見なかったことにしよう。もう台に話しかけてる時点でダメだろ...。
「はは...もうこれで1000円札何枚溶かしたんだろ...。次、7枚目か...。まあしょうがないよねぇ...」
おい、その小さいぬいぐるみで6000円も投資してんのか。あれって比較的に取れやすい台だぞ? まあ俺は知ったことじゃない。さっさとここを出て...。
「あれれ、あれれれれれ? こーんなとこに知ってる子がいるぞー」
「うわぁ!? さっきまであの台いましたよね!?」
「ふふ...私は瞬間移動できるのだよ。なーくんってば私に会いに来ちゃったの?えへへ、可愛いとこあるなぁ」
「いや上城さん帰ったんじゃないんですか!? てか今日のことなかったことにしようって言いましたよね!?」
「えー、また会ったなら意味無くない? 硬いこと言わずにさー。あ! ここで初めて私に会ったことすれば良くない!? 私ってば天才!!」
天災だよ。なんでだよ。そんな矢先、彼女は俺の耳元でこっそり小声で言った。
「...ねえ。このくまっまちゃん私の代わりに取ってくれない? 取ってくれたらなーんでもしてあげる」
若干吐息がかかったせいか、少し身体が反応してしまう。待て待て。こんな人に引っかかるわけには...。え!? なんでも!?
「もうなーくんてばウブなのかなぁ? お姉さんの吐息にそんな反応しちゃうなんて...。もっといじりたくなっちゃうなー」
「い、嫌ですよ。僕がここで変に恩を買ったら、変に関係が続くじゃないですか...」
「まーたそんなこと言う。もう1回私のこと見て。こんな清楚で可愛いお姉さんどこにいるっていうのかなぁ?」
確かに可愛い。スラットした体型に、全体を白でまとめたファッション。脚の長いパンツでの見た目はまさに大人の女性って感じだった。何より可愛いらしい顔つきなのは誰もが認めるだろう。少し垂れ気味の目はパチッと空いていて、白い肌にほんのり少し赤い唇。あとは大人の部分がちょっと大きめなんだろうか...変な意味じゃないよ。
「きゃーそんな見ないで! お姉さん恥ずかしいー! もー!」
いや発言でプラマイゼロだろ。でもこの喋り方が可愛いのか...? いやそれにしてもお花要素強めな気が..。
「む、この喋り方が気に食わないって顔してるね? はぁー、これだから清楚系にわかちゃんは。やれやれだぜ。こんな可愛いくておもしれぇ女がどこにいるって話よね」
「なんか自分で言うの辞めてもらえません?」
ド直球なツッコミをしてしまった。もうしょうがないだろ。
「こほん...あら、なつくん。クレーンゲーム好きなの? 私も大好きでさー...この子取ってくれない? ダメかな?」
なんか反則的なねだり顔してきたんだが。これはこれで...めっちゃいいな。ずっとこれでいてくれ。
「い、1回だけなら...」
くそ!! 俺だって早く離れたいけど、なんでもって言われたらねぇ!? やるしかないでしょうが! 俺はそのまま100円を突っ込み、いつもの要領でやってみる。
「あ...取れちゃいました」
すごい普通に取れてしまった。何回かやったせいでアームも強くなっていたんだろうか。
「う、うそうそうそ!? くまっまちゃん!! くまくまー!! えへへ! くっま、くっま!!」
え、これで俺より年上? でもなんかめっちゃ可愛いんだけどこの人。こんな子供なのに...。
「めっちゃモフモフ!!...はむはむしちゃうね? はむっ、んーんーーんんー♡」
おい耳咥えて何してんだ。求愛行動ですかこれ。
「くまっまちゃんのママ成分を接種してたのだよ...ふふふ。本当にありがとう! なーくん!!」
その刹那、俺の鼻腔には花のような甘い香りがした。あと全身が柔らかい。
「え、ちょっ、いきなり抱きついて!!」
「いい子にはぎゅーしちゃうの! ぎゅー...よしよし、いい子だね」
頭を優しく撫でられる...。ちょっと周りの目が。でもすごい落ち着く...。何故か懐かしい匂いだ。
「あ、あんた彼女いたの...!? え!? ええ!?」
後方から大声。あまりにも聞きすぎた声に脳内マイセット登録から1人の人物が検索される。
「よ、淑乃...これは違うんだ...」
ここから入れる保険ってあるのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます