第3話 ギルド女神の息吹

「阿平さん!やりました!」

 美織はギルド本部に駆け込む早々、手に高々と掲げたラミアの毒剣を見せた。


 ギルド女神の息吹ゴッドブレスのギルマス、阿平沙也加くまひらさやかが、ギルド職員に呼び出されて入口に出て来た。年齢非公開の美女。見た目は30歳前後というところか。


 背中までの長い金髪は、ウクライナ人である母親の血を引いた地毛である。灰色がかった切れ長の青い目も、母親からの遺伝だ。


 リアル峰不二子と呼ばれる、出るところが出てくびれるところがくびれた美女である。

 特に足首にかけた美しさは、女性ファンも多く、インフルエンサーとしても活躍している現役の探索者でもある。


 プロデュースしたストッキングの売上が、探索者としての活動収益に匹敵するのではと言われるほど、国内外で売れていた。


「どうしたの?久しぶりね、美織ちゃん。

 ⋯⋯それ、ひょっとしてドロップアイテム?まさか、ついに落ちたの!?」


 阿平が美織の目を覗き込む。人の目を見ることが苦手な美織だが、長くかかわることが出来ればそうでもない。阿平沙也加は、その数少ない、目を見て話せる相手だった。


「はい!ついにです!それと、スキルの秘密がわかったかもしれません!」

「例のへんてこなスキルのこと?」

「ですです!」


 ギルド女神の息吹は、美織が中学時代に研修生として参加していたギルドであり、その頃からの縁だ。当時から阿平さんの見た目が変わらないなあ、と美織は思っていた。


 ギルドに加入せず、ソロで探索を続けていても、変わらず相談に乗ってくれていたのがこの阿平沙也加なのである。


「お茶を淹れさせるわ。部屋でゆっくり話しましょ。ドロップアイテムってことはそれ売りたいんでしょ?鑑定に回しておくから。」

「はい!わかりました!」


 探索で出たドロップアイテムは、国に申請をして許可を得た企業、またはギルドでないと売り買いは出来ない。個人がフリマなどに出すことは禁止だ。免許制度なのである。


 中には取扱いの危険なものも多いこと。偽物、または本物を写真に掲載しておきながら取引の時点で偽物を郵送する方法でフリマに出す人間が多かったこと。また貴重な品が裏ルートで海外に流れることを法律で防いだ。


 その為、観光客向けのダンジョンの入口では、役所に依頼された企業、またはギルドが鑑定所を設置して、臨時買い取りをおこなっている。


 その場合、観光客が潜れるダンジョンでは大したものが出ない為、新人や、あまり探索者として芽の出ない、事務員扱いでギルドに登録している人間が回されることが多い。


 たまにこうしてギルドや企業に持ち込む個人もいる。その場合の手数料は、30万までで2割。それを超えると5割である。


 高いと思われるかも知れないが、これはギルドや企業が税金を代理徴収しているからに他ならない。ギルドの手数料が2割、国の税金が3割。合わせて5割というわけだ。


 もちろん税金なので、その他の所得と合わせて年末調整で戻って来る場合もあるが、探索者の多くは年収が最低でも5千万は超えることから、予め高く設定されているのだ。


「──生配信中にアンケートが出たの?

 スキルアンケートって、そのアンケートだったの!?配信前提ってこと?」


「はい、そうみたいです。

 自分でドロップアイテムを選ぶ事が出来なくて、リスナーさんがアンケートに投票したことでようやくドロップしました。」


「配信前提のスキルだなんて、そんなもの聞いたことがないわ⋯⋯。」

 なにしろ探索者による配信自体が定着しだしたのもここ数十年の話なのだ。


 配信をしなければ何も得られないスキルであれば、配信業が存在しない時代であれば、それこそ芽の出ないスキルだったであろう。


「今までアンケート機能がついてなかったので、発動しなかったみたいですね⋯⋯。

 でもこれで、ようやく私もまともな探索者の仲間入りです!」


 美織は嬉しそうに、胸の前で両手をグーの形にして握りしめ、がんばるぞっ!の気持ちをポーズにこめた。


「でも⋯⋯あなたの配信、過疎ってるんでしょう?だいじょうぶなの?」

 頬に手を当てながら沙也加が言う。


「この間、人気の配信者さんが、リスナーさんを誘導してきてくれたんです!何人かでも残ってくれれば、誰か押してくれると思うので!今日もこれからダンジョンに潜ります。

 今日は絶対お肉の日です!」


「お肉の日?なにを狩りに行く予定なの?」

「ミノタウロスです!阿平さんが、一度は食べられたらいいわねって言ってくれたじゃないですか!食べてみたいんです!」


 既によだれを垂らしそうな顔で美織が言った。今日は美味しいと評判のミノタウロス肉が目当てなのだ。ドロップ確定であれば、レアな部位も手に入るかも知れない。


「そう⋯⋯ね。スキルのテストにもちょうどいいかも知れないわね。無事手に入るといいわね。ミノタウロスのお肉。」

「はい!頑張ります!」


 その時、コンコン、とドアがノックされ、阿平のどうぞ、という言葉で職員が部屋に入って来た。


「鑑定が終わりました。大変状態のいいもので、通常のラミアの毒剣よりもステータスや効果の高いものでした。鑑定の結果、ギルドは300万を提示させていただきます。」


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2024年12月17日 18:55
2024年12月18日 18:55

【悲報】無双する美少女JK底辺Vtuberですがドロップだけはアンケート頼りなんです!〜レアドロップ確定のチートスキルを手にするも、リスナーアンケートでしか選べません!誰か助けて下さい!!〜 陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中 @2145675

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