第2話 初めてのドロップ品

 美織は初めて見る画面に困惑していた。だがそこには、あれほど欲したドロップ品の名前が。しかも片方はレアドロップだ。

 こんなのレアを選ぶしかない。だが。


『あれ⋯⋯?』


 アンケートを押そうとしても、画面はまったく反応しなかった。これが恐らく自分のスキル、アンケートの能力の筈なのに。


「あれ?あれ?」


 スマホの感知が悪いのかと、何度も押してみるも結果は変わらない。再起動しようものなら配信が切れてしまう。どうしたものか。


「あの⋯⋯、どうかなさったんですか?」

 先程助けた美少女が恐る恐る聞いてくる。

「配信画面が反応しなくて⋯⋯。」

 美織は泣きそうになりながら言った。


「ちょっと見せていただいてもいいですか?

 なにかわかるかも知れないので。」

「はい。」


 そう言ってくれた美少女に画面を見せる。

 すると、

「これ別に普通に配信されてますよ?何が問題なんですか?」


 と言われてしまった。

「アンケートを選びたいのに、選べないんです。ここの、ほら、これ⋯⋯。」

 と美織は指さした。


「ああ、これ、配信者画面ですから、それはそうですよ。選べるのはリスナー。視聴者側だけです。」

「視聴者!?」


「視聴者にアンケート回答してもらう為の機能ですから⋯⋯。リスナーさんに押していただいては?」


 それを聞いて美織はますます泣きそうになる。

「私、同接0なんです⋯⋯。」


「え!?あんなに凄いのに!?」

 美少女は驚いた表情でそう言った。


「誰か!来て下さい!アンケートに回答してぇ!ラミアの毒剣がぁ!」

 美織は叫ぶも、同接は当然増えない。


「あの⋯⋯せめてものお礼に、うちの視聴者誘導しましょうか?」

「え!?いいんですか?」


「アンケートに回答してもらえばいいんですよね?うちの視聴者さんたちは優しいので、多分そのくらいならやってくれると思います。チャンネル名はなんて言うんですか?」


「単独討伐・剣呑寺いおりチャンネルです⋯⋯。」

「わかりました、今から皆さんにお伝えしますね。配信にのせてもいいですか?」


「あっ!ごめんなさい!カメラはちょっと!私Vtuberなので⋯⋯。」

「あ、ごめんなさい、失礼しました。」

 美少女が慌てて謝る。


「あれ?あれ?」

「どうしました?」

「なんでか、アンケートがカウントダウンをはじめて………。」


「ああそれ、配信者が締め切らなくても、自動で公開されるシステムなんですよ。」

「いやあああ!ドロップが!レアドロップが消えちゃう!!」


 美織は焦って叫んだ。

「誘導すればいいんですよね!?急ぎますから!みんな!今私を助けてくれた人の放送にいって、アンケートを押してくれないかな?剣呑寺いおりチャンネル!ええと……。」


「ラミアの毒剣!ラミアの毒剣を選択してください!」

「聞こえたかな?ラミアの毒剣を選んでね!みんな時間ないよ、急いで!」


:ラミアの毒剣?

:売れば200万になるレアドロップだ

:見てきたけど、なんでそれとハイポーション2択なんだよ笑

:入れた


 美少女の配信画面にコメントが流れる。通常時の同接は7万人。人気のダンチューバーだ。今は人が死にかけているのを見に来た人間たちのせいで同接30万人になっていた。


「みんな、ありがと!」


:いえいえどういたしまして

:てかさっき、一瞬スゲー美少女映らんかった?

:まさか同年代の女の子が助けてくれたのか?

:Vtuberじゃん、顔出ししてないのか

:声かわいいな


「そうだよ、同い年くらいの女の子!」

 美少女はようやく落ち着いたのか、落ちていたカメラを拾って配信を続けている。


 その間に美織の配信のアンケート結果が出た。


【確定ドロップアンケート。

 1.ラミアの毒剣(56.3%)

 2.ハイポーション(43.7%)

 ラミアの毒剣が選択されました。】


「誰!?ハイポーションに入れたの!!私のアンケートで遊ばないでぇ!」


 美織は思わず叫んだが、なんとかギリギリでラミアの毒剣を選ぶことが出来た。


 目の前が光り、空中にラミアの毒剣が現れたかと思うと、ポトリと地面に落ちた。


「やっ……たあああ!初めてのドロップ!」

 喜ぶ美織に、

「え?ドロップ?今?」

 と美少女が驚く。


「はい、ラミアの毒剣を無事手に入れました。ありがとうございます!」


 その声を聞いた美少女の配信画面で視聴者たちがわく。


:マジか!?200万のレアドロップだぞ?

:証拠を見せろ!

:見たい!


「あの、うちの視聴者さんたちが、ラミアの毒剣が見たいらしいんですが、見せていただくことは出来ますか?」


「ああ、うん、はい。これです!」


 美織は自分の配信画面でラミアの毒剣を映して見せた。

 2窓していた視聴者たちは大興奮だ。


:マジのラミアの毒剣だ!

:マ?

:しかもイレギュラーのレアドロップ!

:イレギュラーのレアドロップって、普通のドロップ品より性能がいいんだよな?

:てことは200万以上……?


「皆さんのおかげです!選んで貰えなかったら手に入りませんでした!」


:どゆこと?

:ドロップに選ぶもク/ソもねーだろ

:もとからあったんじゃねえの?


「これが私のスキルなんです!多分ドロップ確定だけど、アンケートで選ばれたものしか手に入れられないみたいで……。」


:マジかよ

:リスナーの責任重大

:ハイポーション選んだ奴ら土下座しろ


「これからも良かったら、ほんとなのかどうか確認がてら、見に来てくださいね!

 おつおりでした〜!」

 美織は手を振って配信を終える。


 美少女の配信から流れて来てくれた視聴者もいて、残った同接が初の53人。

 美織は大満足だった。


「あ、ごめんなさい、放っておいて。あの、私、高坂美織こうさかみおりって言います。配信だと剣呑寺けんのんじいおりでやってます!」


「私は狸穴琉夏まみあなるかです!配信だとルカルカでやってます!さっきは本当にありがとうごさいました!」


「いえいえ、お怪我がなくて何よりです。誘導もありがとうございました!おかげで初のドロップ品を手に入れられました!」


「え?初?始められたばかりなんですか?」

「いえ、かなり長いことやってるんですけど、私のスキルのせいか、一度もドロップがなくて……。でもこれからは平気そうです!」


 喜ぶ美織だったが、この時はまだ知らなかった。人気配信者のルカルカを助けたことで配信に人が集まることも、そのリスナーのアンケートに振り回されるということも……。


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