【悲報】無双する美少女JK底辺Vtuberですがドロップだけはアンケート頼りなんです!〜レアドロップ確定のチートスキルを手にするも、リスナーアンケートでしか選べません!誰か助けて下さい!!〜

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中

第1話 アンケートでドロップアイテム選択

「はあ……今日もドロップなしかあ……。」

 高坂美織は盛大にため息をついた。


「同接も0になっちゃったし……。チャンネル登録者も伸びないし……。向いてないのかなあ。せめてレアドロップがあれば、配信が盛り上がるんだけどなあ。」


 配信中にも関わらず愚痴を言ってしまう。

 まあ、どうせ見られていないのだから、誰が聞いているというわけでもないのだが。


 美織はダンVtuberという、ダンジョン配信とVtuberをかけ合わせた配信をしている。

 それは単に美織が人前に出るのが怖いからに他ならない。


 人と目を合わせるのが苦手で、自分の顔を見られながら配信出来る気がしなかったのである。その点Vtuberはいい。自分ではないガワを視聴者は見ているのだから。


 なけなしのアルバイト代で機材を揃え、絵師にガワを作ってもらった。黒髪ポニーテールのお姉さんぽい剣士の女性だ。


 美織は黒髪ツインテールの、ちょっとロリっぽい見た目で、胸だってかなり大きいほうの部類で、ハッキリ言って美少女である。


 本人が直接配信したほうが、まだアイドル配信が出来そうなものだが、美織の性格がそれを可能としない。


 美織はスマホの画面で、挨拶だけして消えたリスナーが戻って来てくれることを期待したが、同接0の数字は変わらなかった。


 この世界に最初にダンジョンが現れたのは美織の祖父母の時代だと言う。その頃はまだ戦える覚醒者と呼ばれる人間も少なく、自衛隊や警察が対応をしていたが、覚醒者という存在がアメリカで当たり前になった頃、他の国でも次々に覚醒者が現れだした。


 今ではダンジョンに関する法整備も進み、覚醒者たちによる、ダンジョン探索者という職業が新たに生まれ、定着をした。


 ダンジョンから得られる魔物たちの素材や鉱物は、どれも貴重なものばかりで、国がこぞって奪い合うほどの代物だ。


 かつで農作物や家畜などの輸出量や、ダイヤや石油の輸出量が国力や国内総生産を決めた時代は影を潜め、ダンジョン産出品が新たなエネルギーや素材として利用されるようになっていった。


 選挙権を引き下げた時よりも早いスピードで、高校生も探索者として活躍出来るようになった。プロのギルドに研修生としての参加であれば、中学生もダンジョンに潜ることが可能なほど、国は有能な探索者を欲していた。


 美織の家は貧乏である。その為成功すれば大きく稼げるという、探索者に夢をかけたのだ。だが、配信者として成功出来ずとも、ドロップさえあれば、一定の稼ぎになるというのに、なぜか美織は一度もドロップを経験したことがなかったのだ。


 探索者でなくても入ることの出来る、観光客用の上層のダンジョンですら、である。

 覚醒者としてのスキルのない人々が、ゲーム気分でレンタルした武器で魔物を倒し、ドロップアイテムを精算するさまを横目で見てきた。


 美織の覚醒者としてのスキルは<アンケート>。この謎のスキルは、今のところなんの役にも立っていない。


 謎過ぎて誰もこのスキルの使い方を知らないのだ。特定の人間しか持たないユニークスキルの存在は知っているが、恐らくそれであるのだろう。


 だが美織は知らなかった。深淵に単独で行かれる女子高生などいないということを。

 そしてそのソロ討伐をフェイクと疑われていることを。


 深淵でも、深層でも、下層でも、何もドロップがなく、またありえない女子高生によるソロ討伐。視聴者はすぐに離れていった。


 だから今日は上層に来ていた。魔物の数も多い分ドロップ数も当然多い。なんでもいいのだ、何かドロップするところを見せたい。そして少しでも素材で稼ぎたい。


 その時、中層につながる階段付近から、女の子の悲鳴が聞こえた。誰か襲われてる?

 美織は配信をつけたまま、急いで中層へと降りていった。


「た、たす……たす、けて……。」

 思わずカタコトになってしまっている可愛らしい女の子。目の前には蛇の体に女性の上半身のついた、ラミアがとぐろを巻いていた。


 ラミアはこんな上層近くに出る魔物じゃない。中層のダンジョンボスなのだ。下層なら普通に出てくる魔物だ。

 ──すなわちイレギュラー!


 本来上層近くの中層で狩りをしている探索者に倒せる魔物ではない。美織はすぐさま駆けつけると、横一線!ラミアを切り捨てた。


「だいじょうぶですか!?」

「あ、え?あ、ありがとうございます。」

 美少女はキョトンとしている。


「良かった。イレギュラーだったんですよ。

 お仲間さんはどうなさったんですか?」

 浮遊タイプの自動追尾配信機器をしていないのか、手持ちタイプの配信機器が地面に転がっているところを見ると、配信担当の仲間がいないとおかしい筈なのだが。


「それが、逃げてしまって⋯⋯。」

「そうだったんですか、それは怖かったですね。もうだいじょうぶですよ。」


 そう言って美織はラミアを振り返るも、やっぱり何もドロップはなかった。ハア⋯⋯とため息をつく美織。


 するとそこに、美織の浮遊タイプの自動追尾配信機器の声が響いた。


【視聴回数1000回の達成を確認しました。アンケート機能を追加します。】


『アンケート?ああ、配信の特典か。チャンネル登録者数や、視聴回数に応じて選択肢の増える機能だよね。一応私、そこまでは頑張ったんだな⋯⋯。』


 かと言って、視聴者のいない配信では、アンケートなど表示しても、押してくれる人間はいない。意味のない機能だと言える。

 それでも一応見てみようと思った。


 するとスマホの画面には、美織がまだ内容を打ち込んでいないにも関わらず、


【確定ドロップアンケート。

 1.ラミアの毒剣(ドロップ率2.5%)

 2.ハイポーション(ドロップ率40%)】


 と書かれたアンケートが、配信画面に表示されていたのだった。


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