第二章 腕枕
目を閉じ、眉をしかめながら、沙也加は苦痛の時間が終わるのを待っていた。
両手の指を強く握り締めるように枕を抱き、只ひたすらに耐えるのであった。
和男は息を荒くして果てると、沙也加から離れ煙草を一本取り出し煙たそうに吸った。
薄暗い部屋に白い煙が広がり、まるで時間が姿を表わしているかのようにゆっくり漂っている。
沙也加は「ホウッ」と、ため息をつくと後始末をして衣服を身に付けていく。
和男の一物が縮んでコンドームがゆるんできた。
それをこぼさぬようティッユで包みながら慎重に抜き取ると屑籠に放り込み、ゴロンと大の字になって横になった。
「風邪・・ひいちゃうよ・・・和ちゃん」
消え入るような声で、沙也加が言った。
和男は無視するように天井を眺めている。
結婚してもう半年になるというのに、未だに沙也加は「いった」ことがない。
それどころか和男との行為の最中苦痛に顔を歪め、只ひたすら終わるのを待っている。
そんな彼女の幼さを最初の内はうれしく思って感激していたが、こうも続くと自分が嫌になってくる。
余程テクニックがないのかと、色々な本を読み漁ったが無駄であった。
早くに両親を亡くして伯父、伯母に気を遣っていたせいもあるが沙也加はセックスに対して一種の恐怖心があり、最初の時の痛みが余計それに拍車をかけて決して濡れない身体になっていた。
若く美しい妻の事でひやかす友人達に相談したところで、からかわれるのがオチで和男は言い表せられないストレスに苛立つのだった。
「本当に風邪、ひいちゃうから・・・」
下着を渡そうとする沙也加から面倒くさそうに取ると、パンツをはいた後は裸のまま蒲団に潜った。
(この頃いつも・・・
和ちゃん・・怒っているのかなあ・・・
気持ち・・よくないのかな・・・?)
「ごめんなさい・・・」
消え入るような声で囁き和男の蒲団に潜り込んだ。
腕を頭に組み天井を見つめていた和男であったが、まだ幼い妻を見るとそっと腕を回して抱き寄せた。
やがて二人は互いを気遣いながら、眠りにおちていくのだった。
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