親友からの告白

数日前、久しぶりに幼馴染兼親友と会った。半年ぶりに会った親友はひどく痩せていた。なんで連絡しなかったんだ?と聞くと、「心配をかけたくなかったから」と親友は言った。


「まあ、深くは聞かないけどとりあえず元気そうでよかったよ」

「そういうところ好き」

「はいはい」


カフェでゆっくり珈琲を楽しんでいると、親友から衝撃の告白をされた。


「あたし、多分車の事故とかで29歳で死ぬと思うんだ」


私は不思議と驚かなかった。なぜなら、親友の背後には常に”死”の足跡が残されていたからだ。今思えば、昔からよく死にかけていた。


目を細め、親友の後ろを見やった。今にでも死の国へ連れて行こうとする死神の手が見えた。親友の告白は嘘じゃないかもな、と私は思った。


「そうか。お前のことだから、根拠とかはなくて、ただ漠然とそう思うってことだろ」


驚きや追及をしない私の態度が嬉しかったのか、親友は最高にいい笑顔でこんなお願いをしてきた。


「あたしの言った通り、もし、29歳で死んだら笑ってよ」


一瞬だけ、頭の中が真っ白になった。


「ほかのみんなが悲しみに暮れている中、氷魚だけは大笑いしててよ。それで、『やっぱりな』って笑って、悲しみを笑い飛ばしてほしい」


思わず珈琲を飲む手を止めた。

その願いはなんて残酷で、無垢なのだろうか。


「あたしのお願い、聞いてくれるよね?」


私が親友に弱いのをいいことに、そう言ってくる厚かましい性格が何気に好きで気に入っていた。


「わかったよ。笑ってやろうじゃねえか」


私の声はかすかに震えていた。


5年後、親友は予知通り、交通事故が原因でこの世から去るのだろうか。

どうか、そんな予知が外れますように。


私はそう、心の中で必死に神様へお願いをするのだった。



 ――愛飲している珈琲がひどく苦く感じた。

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