第3話 寝取られやんけ

 い、いま、俺の目の前に寺王シロがいる。

 男子トイレで、俺に迫ってきている。


「ねぇ、どうするの。しないの? するの?」


 するって、なにを?

 決まってる。そんなの決まりきってる。


 でも、なんで? 急にどうして?

 わからん、俺の身に何が起ころうとしているんだ。


「あ、う、え?」


「もー、これだから童貞くんは。こっち来て」


 俺の手を引き、個室へ。

 素早く鍵をかけて、ぐいっと俺に体を密着させてきた。


「いつもいつもさ、ずーっと私のえっろ〜い太もも、見てるよね」


「み、見てましん」


「はは、どっちだよ。いいよぉ、触っても。触って、撫でて、舐めてもいいよ。レロ〜って」


「…………」


「すべすべだよ〜。もちもちだよ〜。そのままお尻も触りたい? そ・れ・と・も、私が触ったり舐めたりすればいいのかなぁ? れろれろ〜」


 シロが舌を上下に動かす。

 さ、さすが歩くR18だ。エロい所作も心得ていやがるッッ!!


「あ、あの、どうしていきなり」


 スンっと、シロが無表情になった。


「昨日さ、ミユとなんかあったでしょ」


「是田さん? え、なにかって?」


「とぼけなくてもいいよ。安心して、えっちしていないのは知ってるから」


「???」


「ミユとえっちしちゃ、ダメだよ」


「ダメってのは……」


「ミユはね、処女じゃなきゃダメなの。別に、芦間くんだってミユのこと好きじゃないんでしょ?」


 俺の名前知ってたんだ。

 嬉しい。

 はい、そうですとも。俺が好きなのはお前、あなた様ですとも。


「もしミユに手を出さないって約束してくれるなら」


 シロの唇が俺の耳元まで近づいた。


「生でしてあげてもいいよ」


「うぐっ!!」


 さらに彼女の艶やかな指先が、俺の胸に触れ、つつつーと下に降りて、大事な部分を刺激する。


「あれー? もうこんなになってる。てか、うそ、結構デカめ?」


 チャックを下される。

 パンツに手をかけられる。


 はじめてだ、俺以外が俺のアソコを触るのは。


 やばい、抵抗できない。

 ていうか、抵抗したくない。


 これは夢か?

 いや、断じて夢であるものか。

 夢であるなよむしろ!!


「どうする、約束する?」


「します!!」


「ひひ、素直でよろしい。でもさ、一つ疑問なんだけど、なんで私が好きなの? 私がどんな女か、知ってるよね? 君みたいな純情くんは、嫌いになるもんじゃない?」


「……きなので」


「ん?」


「ビッチが好きなので!!」


「ははは!! なにそれぜんぜん純情じゃないじゃん。まさか毎日、私が他の男に抱かれている妄想で自家発電してたとか?」


「してました!!」


「ふふ、とんでもない変態じゃん。じゃあ」


 俺のムスコが、直接握られた。


「しよっか♡♡」


 そして、ニュルっとーー。








 まだ、頭がぼーっとする。

 腰に力が入らない。

 やばかった、やばすぎた。


 ススっと、シロは自分のパンツを履き直した。


「はぁ……はぁ……凄かったよ、芦間くん」


「あ、ありがとうございます……」


 シロの髪が汗で濡れている。

 それくらい、激しく動いてたのか、俺たち。


「マジでビックリしちゃった。あんなにバカになったのはじめてかも。ひっさしぶりに本気で喘いじゃった」


「どうも。……あの」


「ん?」


「なんで、是田さんは処女じゃなきゃいけないんですか?」


 俺も己の愚息をしまう。

 寺王シロが、クククと喉を鳴らした。


「私がエロ話をするとね、ミユってば顔を赤くするの」


「うん」


「でもどこか羨ましそうで、つまらなさそうで。そういう、処女特有のモテ女に対する羨望と軽蔑と嫉妬心と、モテない自分へのコンプレックスが混ざり合った表情が……たまんなく可愛くて興奮するの♡」


「うわぁ……」


「私はね、ただ気持ちよくなりたくてえっちしてるわけじゃないの。ミユの感情をぐちゃぐちゃにすることに愉悦を感じるからえっちするの」


 あ、なるほどね。

 つまりこいつも激ヤバ女だったってわけね。

 賢者タイムなおかげで、割と冷静に対応できている。


「はぁぁん♡♡ 思い出すだけでまた濡れちゃう」


「まさか、是田さんとえっちしたいとか?」


「いや、さすがにそれはない。女同士だし」


 そっすか。

 つまり百合じゃないってことね。

 よかったよかった。我が国の法律では男が百合の間に入ると一族含めて死刑にされちまうからな。


「んじゃ、そういうことで。もし約束破ったら、切るから」


「な、なにを?」


「アレをちょん切る」


 シロがどこからかハサミを取り出した。

 ただのハサミじゃない、裁縫用の裁ちバサミだ。


 本当にどっから取り出したこいつ!!


「芦間くんのこと気に入ったから、またしてあげるよ」


 シロが去っていく。


「待って!!」


「ん?」


「これからも、ビッチでいてくれる?」


「ふふ、もちろん。安心して。このあと別の男ともヤルから!!」


 と、爽やかにサムズアップ。

 はぁ、やっぱり最高だ寺王シロ。

 ドエロすぎる。


「最後に、私から一つ恋愛アドバイス」


「?」


「ビッチだから好きと、ビッチだけど好きはまったくの別物だよ。ばいばーい」


 どういう意味だ?

 好きになる要素があるから好きになった、つーのは自然な形だろう?

 まぁいいや。





「あ、俺もう卒業したのか」


 てことは是田ミユが理想とする幸せはじめてえっちは不可能になったわけだ。

 なんだろう、この申し訳ない気持ち。





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※あとがき

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